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松竹映画部門、ここまで落ちぶれたか…『歌舞伎クラシック』

 先ほど、届いて放置してあった『ほうおう』誌を見てビックリ! 主に昭和の頃、NHKが劇場中継として放送した歌舞伎の映像を映画としてカネ取って見せる『歌舞伎クラシック』を東京・東劇限定で公開するそうな。

 言い訳(こじつけ)は「第四期歌舞伎座で見せた至高の芸」(同プログラム宣伝チラシより)を見せるためだそうですが、意味不明です。昭和のテレビ画質のものを、大画面に映して見せるのが「映画」なんでしょうか? しかもその多くはDVDとして発売済みのもの。富十郎さんと雀右衛門さんが大事に再演を重ねた『二人椀久』だって、平成9年のもので、ジャックが既に往年の動きがちょっとだけ難しくなってきてからのものだし、NHKにはお二人の『…椀久』のハイヴィジョン収録版だってあるだろうに、版権処理の簡単さに魔が差したのかDVDでとっくに発売済みのものです。

 チラシのどこを見ても、例えばですが、東芝が開発したような画質向上ソフトなどを活用してノイズ低減やハイヴィジョン画質に近づけた、とか、名作映画のような「修復」作業をしたとの記載はなく、古いもんだから、ところどころお見苦しい点はご容赦を、って、何様なんでしょうか?

 要するに、DVD化した時と同じ昭和のアナログ素材をデジタル・データ化したけど、それ以上のことはしてないです、ってこととしか解釈できません。(不正確な理解でしたら、松竹さん、どうぞコメントお願いします。)

 久しぶりに實川延若さんの写真をチラシで拝見して、本当に懐かしいですが『十種香』にチラっと出るだけ。歌右衛門の『合邦』(最後の本公演玉手御前?)のすぐ前の幕で出して現・梅玉さんと共演された『研辰の打たれ』もNHKにはある筈だし、ウチの実家にもある筈なんですが、そういうのはお出しするつもりはないようです。

 大中村(17世勘三郎)の『髪結新三』と、芝翫さんの『年増』については個人的にはセルDVDを所有しておりませんし、発売済みかはすぐには確認できませんが、どちらも舞台中継の映像でしょう。『年増』については、当時、山川静夫アナウンサーが司会されていてた『邦楽百選』か何かの枠で放送された舞踊ではないかと記憶しております。

 確かに映像資産を大切にし、活用し、なおかつ、そういう時代をご存じない若い世代や、当時、日本の古いものなんかに興味もクソもなかった団塊の世代さんたちの知的マスターベーションには大層よかろいぞいのぉ、と思うところもありますが、あまりに安易であるし、NHKが松竹株式会社に当時、いくらの中継料を支払い、出演者にいくら払って放送し、いくらかけて松竹とNHK両方の団体名を付してDVD化したのは存じませんが、ほとんど、いいかげんモトは取れてるような昭和な素材を、上演時間の短さに合わせたのか、映画としてはやや低料金で後悔するとは、ケチな商売にしか思えません。高齢者割引、歌舞伎会カード割引、障害者割引の記載もございません。(実際には障害者割引の有無は要問い合わせだったりしますが、積極的な記載はございません。)

 YouTubeで期間限定、清元など浄瑠璃の字幕つきで無料公開します、くらいのことをされるのであれば「さすが松竹!」なんでしょうが「さすが」という表現と「松竹」という社名を近いと思ったこと、この30数年間の歌舞伎観劇歴でございません。残念ながら。寅さんシリーズも好きでよく拝見してましたが、新作が不入りだと寅さん再映をする「松竹病」という表現でしたら、何度も映画専門誌で拝見しておりましたが、新作は電通まかせで制作することもめっきりすくなくなり、昭和の名人落語の次は、昭和のNHK劇場中継の「映画」化とは、見上げたもんだよ屋根屋のふんどし。

 往年の名優を見せるなら、今の松緑さんのおとうさんの辰之助さんの『丑松』を出すとか、他にもやりようがあるでしょう。

 ちなみに、昭和の頃のNHK劇場中継は、出演者にとっても今よりはよかったようです。歌舞伎チャンネルや衛星劇場といった松竹のカメラが入っても出演者(少なくとも名題俳優以下)には追加収入は一切ありませんが、昔はNHKだけでしたから、収録したら出ている方々には振込がありました。しかも、いいですか、ここからが肝ですよ、NHKは収録しても放送していない未放送・未公開の劇場中継(芝居)も破棄したりしていなければ持っている筈なんですが、なぜかお蔵入りのままです。

 そこまで事情通ではありませんが、昔は収録があれば役者に振込がありましたから、お金はもらったけど放送されてない芝居が結構あるぞ、というのは常識でした。おそらく時江さんなんかでもお分かりだったんではないかと思います、って言いたくなるくらい。(彼がどのように認識されていたかは不明であり、あくまで、比喩的表現とご理解ください。)

 その後、NHKはポリシーを変え、放送されてから事後振込という形にしましたし、歌舞伎チャンネル、伝統文化チャンネル、衛星劇場とかを始めてからはNHKに意地悪したかしないのかはハッキリ言いませんが、少なくともNHKの関係者が「撮らせてくれないんですよ」とこぼすような時代になりました。

 DVDなんか買ってモノを増やすくらいなら、ヒマだし東劇で観るほうがいいでしょ!とおっしゃる方々には「どうぞ」としか申し上げられませんが、そういうDVDが図書館から無料で貸し出しでき、常にほぼ全巻、書棚にあるような環境で暮らしていると、東劇まで電車賃かけて行っておカネ払うきにはなりません。同じ図書館から13世仁左衛門の出ている寅さんのDVD(こっちのようがよっぽど貸出中が多い。いしだあゆみも出演)でも借りて、ダメモトで、實川延若さんが出演されて印象的だった山口百恵引退映画『古都』(市川崑・監督)の購入リクエストでも書きます。

 新装歌舞伎座はかくもにぎにぎしく賑わっても、もともと問題山積の映画部門(松竹には自前の撮影所が東京・関東圏にありません! 新木場に作る、という関係者との約束も反故にされたまま。)や、シネマ歌舞伎専門館としてなんとかしようと歌舞伎会カード保持者にも割引まかりならぬ興行を続ける松竹株式会社の映画部門と東劇さん、どうされるんでしょうか? 不動産部門が校長先生ゼッコーチョーのうちに建て直し証券化などされるつもりなのでしょうか?

 これでも松竹の悪口ばかり書くつもりはございません。(笑)東宝とは違って、歌舞伎という舞台を支えるためのかつら屋さんから、長野オリンピック開会式で伊藤みどりが着た衣装から東京ディズニーランド新春のキャラクター着物から実は上下セパレートの歌舞伎用衣装まで手がけるグループ会社などを経営されて来られたのです。役者になりたい人だけがいてもどうしようもない世の中で、現在の帝劇が歌舞伎上演もできるようにと設計されながら対応できる大道具さんたちもいなくて40年くらい前でしょうか、白鴎さん唖然…、でも長谷川一夫はOK!とローラみたいな感じで、歌舞伎役者と大衆演劇役者は違うことを改めて認識して高麗屋一門を再度松竹に呼び戻し(現在活躍する多くの名題俳優を育てた又五郎先生は最後まで東宝の俳優でしたが)昼夜二部興行の功罪も言われながらも総合的に歌舞伎を現代の商業演劇として維持されてきましたから、松竹は善いこともたくさんしてます。

 でも、昨年でしたか、映画が撮影も上映もデジタル化される時代の波を受け、南座で『男はつらいよ』全作品をフィルムで上映し、最初で最後かもしれないし、二階うしろから聞こえる映写機のまわる音もお楽しみくださいと陰アナに場内アナウンスまでさせていた松竹株式会社が、元はソニーの1インチか2インチか知りませんがビデオテープを松竹株式会社本社お膝元・東劇でおそらくビデオ(実際はデジタル上映だと思います。アナログテープのままでは上映できないので、デジタル・データ化してデジタル映写機から)上映するって、企業としても矛盾してませんかね? まあ、株主様から文句が出なければ、フィルム特有のあたたかさだの、カメラレンズが考えられられないくらい歪んだ画像や色むらを生んでいた昭和のテレビ&業務用ビデオ録画技術だろうが、木戸銭払って観る客がいればいい、ってことなんでしょうが。

 ただ、尾上多賀之丞の日記を読めば、あの松竹の後の大川専務さんが彼のところへ次回の給金の支払いが遅れるのでよろしく頼むとやって来た、と昭和30年代、第四期歌舞伎座で言われたことが明確に記録されておりますし(役者の給料単位「杯」を知りたい方、是非、多賀之丞さんの日記をお読みください)昭和30年代でしたでしょうか、儲からないからと文楽(人形浄瑠璃)をうまく切り離して特殊法人化して補助金生活(今風に言えば態のいい「ナマポ生活」)にして橋下徹にあんなもの呼ばわりされるようにしたのも松竹株式会社。

 いわゆる「歌舞伎」、正確には「松竹大歌舞伎」の興行主(座元)松竹株式会社が歌舞伎座《第四期》にいかにして台頭する映画やテレビといった他の娯楽と共存してきたか、つい、数十年前、団塊の世代の方でしたらとっくに生まれた後のついこの間まで、どのような歴史を歩んできた会社であるのか『歌舞伎クラシック』の上映に併せて、図書など資料でたどってみるのも一興かと存じます。

(よ)

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2013年06月05日 23:23に投稿されたエントリーのページです。

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