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武智歌舞伎を知る手がかり ― 岡本章・四方田犬彦 編『武智鉄二 伝統と前衛』

 歌舞伎好きであれば「武智歌舞伎」について多かれ少なかれ、どんなものだったのだろうか、と気になるものではないでしょうか? 目にするわりには実態が分らない上に「武智歌舞伎」と関連づけて語られる中村富十郎、中村雀右衛門、坂田藤十郎が「武智歌舞伎」について語っている活字を個人的にはほとんど見かけたことがなかったため、岡本章・四方田犬彦 編『武智鉄二 伝統と前衛』は、ようやくたどり着いた「武智歌舞伎」の残り香とも呼べる貴重な読み物です。

残念ながら、今回も「武智歌舞伎」の舞台の写真などはひとつも掲載されていませんが、富十郎や藤十郎による貴重な証言が収めれているのはうれしいことです。特に富十郎の証言は亡くなる半年前のことだそうです。

俳優の直接的な証言で語られる「武智歌舞伎」という点では非常に貴重な資料でもあります。ただ、歌舞伎に特化した武智鉄二本ではありませんから、今更ながら「本番」で話題を呼んだ映画『白日夢』(1981年)やグアムでしか公開されなかったハードコア作品『高野聖』にまで紙数をさいているため武智鉄二研究家にはよくても舞台芸術演出家としての武智鉄二について知りたい人には不満が残ることでしょう。(本の趣旨を理解したら、このような不平を言ってはバチが当たりますが…。)そこまで詳しく入り込むのであれば、女形(男)しか使えない歌舞伎との対比をするなりすればよさそうなものですが、せっかくお芝居の部分を担当した執筆者が『野崎村』のお染と久松との「そういう意味か」所作に言及しているのに、別の映画担当の執筆者がそういった部分に言及することはなく、評論上の「からみ」がないというのは残念です。

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2012年02月02日 11:10に投稿されたエントリーのページです。

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