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国立劇場開場45周年記念シーズン開幕と尾上菊五郎

 今年開場45周年の国立劇場ですが、今年度は周年シーズンとして今月から来年4月の大劇場における歌舞伎公演を中心に盛り上げようとしております。来月の坂田藤十郎を除けば、今月から4月まで(公演のない2月を除き)人気役者が主演(座長)のラインナップ。最近でも翌々月の演目や座組みが決まらない伝統の松竹において、月々の公演ではなくシーズンとして「売り」に出た国立劇場(日本芸術文化振興会)のほうがよっぽど民間的。

 45周年シーズンのしんがりは菊五郎劇団による復活風新作歌舞伎『開幕驚奇復讐譚』。いつものことながら、伝統歌舞伎の手法を使いつつ色々な表現を試しているような一種実験劇場的な意味合いも多分にあり、古典的な歌舞伎のみを好むご見物衆にはアピールしないと思うのですが、自分はなぜか許せてしまいます。

 詳しくはレビューに書きますが、くしくも今月の歌舞伎が開幕する直前の9月27日、市川亀治郎が四代目猿之助を襲名するという記者会見がありました。

 当代の猿之助といえば、昭和の頃から歌舞伎を観ているファンには、ケレン味あふれる通し狂言を7月公演などで演じる一方で、スーパー歌舞伎第一弾『ヤマトタケル』の初演をリアルタイムで観ている世代としては、ある意味当たり前だった歌舞伎表現を最大限利用した新作歌舞伎というか歌舞伎役者による新作劇を送り出していました。

 その猿之助も藤間紫との再婚や、その影響で段四郎・亀治郎親子が「脱北」したり、病に倒れたりと残念な方向に進んでしまい、勘三郎による新演出作品や、幸四郎による『江戸宵闇妖鉤爪~明智小五郎と人間豹~』などを除くと、歌舞伎役者そのものが冒険をしなくなっているような気がします。

 スーパーカブキだけが「冒険」ではありませんが、冒険心を失いつつある平成の歌舞伎において、菊五郎は危機感を抱いているのではないか?と、正直あまり意味のないと思われる菊五郎・菊之助親子による両宙乗りをながめていて思いました。

 冒険をしない演劇がどうなるかといえば、古典化が進み、現代の観客との慣例性が薄れ、博物館的な存在になってしまう可能性がある、ということです。歌舞伎ならば博物館に価するかもしれませんが、そうでなければ「記録」として残っておしまいなのです。

 明治の名優であり、キワモノ的な芝居も歌舞伎の劇場(市村座)にて演じていた五代目菊五郎を先祖に持つ当代の七代目が、歌舞伎のあり方というか、現代における立ち位置のようなものに敏感であるのもうなずける。

 これまでも国立劇場の「復活通し狂言」ということで、ずいぶん新しいことを取り入れ(Mr.マリックによるイリュージョンなど)ながら奮闘してきました。先代の河原崎権十郎はもとより、市村羽左衛門が亡くなったり、田之助さんも立ち座りのある役は無理な状態が続くなど、配役という点でラクではないかもしれないのに、制限に縛られつつも、あくまで国立劇場がその命題でもある「復活通し狂言」という枠組みの中で、ずいぶん奮闘してきたと思います。

 しかし、単に復活しているのでは冒険がなさすぎる。そんな思いが菊五郎にはあるのではないか。

 今月の冒険が歌舞伎という枠組みの中で成功しているかといえば微妙かもしれません。しかし、肩凝らないで数幕もある狂言をあきさせずに見せようとする構成(攻勢?)力はすばらしいと思いますし、中高年には菊五郎や時蔵、若い見物には松緑・菊之助などの若手を軸にそれぞれの年代で楽しめるようにしているのも効果的です。

 歌舞伎なら歌舞伎のままでいいじゃないか、という意見もあるかもしれませんが、歌舞伎は(少なくとも今現在も)大劇場で興行をおこなう商業演劇である以上、現代のお客様をできるだけ高額な席にできるだけ多く動員する必要があります。

 いつも独り三階席で月数回観劇するファンも大切ですが、お友達やらを何人も誘われて桟敷席や一等席(国立大劇場ならば特等席)に来るような方々や団体客が大劇場公演の動員ではより重要な意味を持ちます。現に今月も2階〜3階の席が両宙乗りのためにかなりの座席を潰すことになりましたが、大劇場とはそういうもの。現・明治座の3階席のキャパが一番わかりやすい例かもしれません。

 時代物、世話物で当たり役をいくつも持ち、なおかつ動員力のある人気を基に自由奔放にコントじみた芝居から今回のレディー・ガガ風衣装までやりたいことをやっているようでいて、実は考えているとしか思えないのです。現代との関連性を持ちつつも、歌舞伎を博物館的な古典芝居のためだけの演劇にしてはいけないという危機感を持って。

 以上は、菊五郎に聞いたわけでもない単なる想像であって、もしかしたらヒイちゃん、単に茶目っ気たっぷりで楽しいこと大好きなだけかもしれませんが。

(よ)

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2011年10月23日 19:33に投稿されたエントリーのページです。

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