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第357回 花形演芸会 2009年2月22日(日) 国立演芸場

 ナイツと菊之丞をお目当てに出かけました。

 まずは、ナイツの漫才。普段、「笑点」や「エンタの神様」などでショートバージョンしか見られないので、寄席のロングバージョンは好きです。昨年末だったか、チバテレビ「浅草お茶の間寄席」でロングバージョンが放送されていましたが、高齢者ばかりの浅草演芸ホールは入りも笑いも薄くて、ナイツはこんな風に寄席で鍛えられているんだ、と思いましたが、今日の国立演芸場は最初から爆笑の渦。でも、中年までは笑っていても高齢者には通じてないようでした。

 次は三遊亭王楽による一席、桂三枝・作『涙をこらえてカラオケを』。ナイツもカラオケや歌ネタをして、王楽がカラオケマイク片手に数曲を歌うこのネタをしたため、今回のテーマが「歌」となり、おかげでポカスカジャンを除く出演者全員が、トリまで最初にちょっと喉を披露することになってしまいました。そのため、かなり盛り上がりました。映画『おくりびと』が最優秀外国語映画としてアカデミー賞を受賞する直前に、この葬式ネタ。ブームなのか、それとも、死が身近でなくなってきているからテーマとして扱いやすくなってきているのか。王楽はまだまだ若いので年寄りの語りよりは、嫁のほうが上手だったりしますが、NHK演芸大賞受賞の一席のように妙な気取りにしか見えない“格調”よりは、まだ良かったし、今回の方が笑えました。(あの時は、桂まん我のほうが絶対におもしろかったしこなれていた。)ただ、芸人としての王楽は、客の懐をつかむように降りて行くというよりは、自分の表現したい理想、すなわち、ある種の芸術至上主義的な傾倒が、私には感じられるので、非常に距離感を感じる人でもあります。うまいとは思います。神経質というほどでもないし、小手先の技巧でごまかしていないと思うし、稽古もたくさんしているような感じは受けますが、これが圓楽一門、寄席の定席に出演していない一門の芸風なのかは、まだまだ落語は初心者の私には判断できません。気持ちいいんだけど、気がつけば避妊具を2枚重ねにされていたような、微妙な感じ。そのためか、客席の照明を暗くしていたからかはわかりませんが、前の席のご老人たちはすやすや。

 続いての落語は、桃月庵白酒よる『佐々木政談』。マクラで、遠山の金さんも実は、本当のところどうだったのか記録がほとんど無いが、当時の芸能を救ったために、感謝の意味を込めて当時の芸能界(大衆芸能)が演目などを通じて取り上げたために名前が残った、と言われていましたが、まさしく、昨年12月の国立劇場歌舞伎公演『遠山桜天保日記』が復活狂言となったのも、そのため。フジテレビによるポッドキャスト「お台場寄席」で昨年はじめて白酒の高座を聴き、おもしろいなぁ、と印象に残った噺家でしたので、今回の高座も期待通りの出来でした。古典落語ならではのテンポと場面転換の早さが身に付いていました。よかった。それにしても今回のチラシもプログラムも、王楽以外は古い写真ばかりで、これ誰?みたいな写真ばかり。白酒といい、歌武蔵といい、痩せてた時の写真を使うな!一時期の歌舞伎座の筋書に掲載されていた番付写真みたいです。(あれは客から歌舞伎座へのクレームで撮り直し令が出たそうです。)

 その次は林家二楽による紙切り。はじめて生で見ましたが、すごい!日本で一番むずかしい仕事をしている人だなぁ、と感心しました。お客さんのリクエストによる紙切りをしながらの話もおもしろく、体を動かして紙切りをする理由説明を照明を使って実演してくれたサービス精神だけでも、いいなぁ、と思ったのですが、スライドショーのようなストーリー構成も見事でした。(内容的には昭和40年代の香りぷんぷんでしたが。)終演後、あれは男が…と同伴者に不毛な議論をふっかけているおじさんを見かけましたが、不粋。紙切りA面B面のプレゼントから非常に客席と舞台の距離が縮まった感じを受けました。この流れの作り方が、普段の定席では色物芸人に要求されていることでもあると思うのですが、なにげに幾重にもすごい人だと思いました。そういう意味でも、王楽の一席を二番目に持ってきたプログラム構成は正解。人の入らない池袋演芸場ネタ、使ってました。

 仲入り後はポカスカジャン。客いじりも入って(途中退席のおばあちゃんやら村田さん!)最高に盛り上がりましたが、コブクロを知らない自分は、ちょっとだけ置いてけぼり。ちなみに、ザ・ビートルズの『レット・イット・ビー』は作曲の教科書にも載っているほど、当時としては斬新なコード進行と和声なんだと、知り合いから教えられました。あえて、言ってしまっていることや演ってしまっていることで笑いを取りながらも、毒舌や過ぎた揶揄にならない芸風が持ち味だとは思いますが、こういうのを見ていると、「タモリ3」の発売が遅れたり著作権使用料の支払いなどで業界的に制裁された時代とは変わったよな、としみじみ。(CD未発売のため、そんなに変わってないよ、という説も。)

 鏡味正二郎のみごとな曲芸(一部ウケ狙いのマジックあり)をはさんで、トリは古今亭菊之丞による『法事の茶』。この人がこんな爆笑ネタを演る人とは知りませんでした。モノマネ芸と言ってしまえばそれまでなのですが、すごい。個人的には柳家さん喬が最高でしたが、前座さんまで動員した彦六となった林家正蔵のマネもすごかった。立川談志のマネをした際のおじぎ発言は最高のスパイス。マクラで、この人もマンツーマン芸である幇間もどきの経験を池袋演芸場で体験したとネタにしていました。茶を焙じると現れるという設定で、法事と掛詞になっているのですが、初っ端が六世中村歌右衛門でした。翫雀らが襲名したときの口上を勉強されたちょうで、そのままのような台詞でしたが、かなり似てました。後の列に座っていた半可通のおばさんが、あろうことか“歌右衛門”に「中村屋!」と声かけてしまったので、「大成駒!」と叫び、歌舞伎ファンとして訂正しておきました。家紋は祇園守で、カレーパンやピロシキではありません。

(よ)

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2009年02月22日 21:02に投稿されたエントリーのページです。

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