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有吉佐和子「一の糸」

 夏に今更ながら「複合汚染」を読み、その際、有吉佐和子が文楽を題材に「一の糸」を書いたとはじめて知り(なんとも不見識)読みました。さすが「華岡青洲の妻」の作者だけあって濃厚な記述と描写と、限りなく突き詰められたかのような主題がみごとでした。

 この作品のヒントとなった文楽の歴史的なことはほとんど知りませんでしたが、文楽が大劇場には不向きの芸能で従事する者もほとんどは経済的には…、という記述が残酷までに正当なだけに切なくもあります。だからこそ「芸」を支える強い女の話が成立するわけですが。

 着物を着る作者が書く着物がらみの描写と、老いに関する表現もみごと。観客の入りを「薄い」と表現したり、言葉遣いまで徹底的に幕内関係者のような著者の知識と取材力は作品よりも興味をひかれるし、それ自体が「芸」ではなかっただろうか。

 自分が手にした文庫本の解説が戸板康二というのも昭和なこと。(昭和の頃、歌舞伎座の筋書には戸板氏の文章が載ってました。)安易な懐古主義には反対ですが、時代が進んでしまうつまらなさもあるのかなぁ、とも考えてしまいました。

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2008年10月16日 12:56に投稿されたエントリーのページです。

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