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萬次郎が活躍する『ザ・マジックアワー』

 今日は終日雨と予報が2〜3日前から出ていたので地元のシネコンへ行き、三谷幸喜の最新作『ザ・マジックアワー』を観ました。始まって間もなく撮影最中の勘定奉行のような“カメ”役の亀治郎がチラっと通り過ぎるように出演。また、従兄弟の香川照之も出ているまではよかったのですが、後半に入ってから萬次郎が登場。(え?知らなかった。でも昭和の頃から歌舞伎観てるから一瞬で分かった。)最初は舞台の縁で顔を出しただけのチョイ役出演かと思いきやクライマックスに向けて少ない台詞ながら活躍。しかもエンドロール前のメインの俳優を劇中場面付きで紹介するところでも「市川萬次郎」とスコープサイズの画面にデカデカとタイトルが出るのです!

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 筋書の写真でもおなじみのあの眼鏡で普通に男として出ているのですが、街を牛耳るヤクザ(西田敏行)の経営する裏帳簿も担当する会計士。くどいですが、台詞はあまりなく、あの顔のまま出ているだけ、みたいなものです。でも、不思議なもので妙な存在感があるのです。脚本と監督を担当した三谷幸喜のにくいところでもありますが、他の俳優が台詞や動きが無いと間が持たないような人達ばかりであるのに比べ、黙っていて動かなくとも芝居になっているところがすごく歌舞伎役者だな、と思いました。歌舞伎役者で芝居を組み立てたことのある三谷幸喜が見抜いていたことかもしれませんが、スコープサイズで萬次郎が入っている絵というのは、どこか締まりがあるというか、目立たないながらポイントになっている視覚的な効果もありますが、ストーリー的なディテールにもなっていてよかった。(そこまで意図したかは分かりませんが。)

 関係ありませんが、『スター・ウォーズ』新3部作のユアン・マクレガーは何度DVDで観てもあのへっぴり腰でサイトセーバーを使いこなせるような剣の達人には見えないから特殊効果が浮いてしまうと思うのですが、萬次郎はその逆で、普段していること(歌舞伎の芝居)が非常にいい感じでにじみ出ていて、コミカルな設定であり得ない役柄でありながらこの映画の作家の世界観にきちっと存在してしまっている芸があるのです。映画俳優と一緒に写ると、体の中心線というか芯がしっかりしているのが分かるのはアッパレ。

 三谷幸喜といえば高麗屋一家との交流でも知られますが、今回は幸四郎も長男も次女も出ていないのに、萬次郎が活躍して、佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、西田敏行らと同じシーンで共演してしまっているのです。アッパレというか、三谷幸喜はどんだけ市川萬次郎が好きなんだろうって思います。惚れたキッカケは萬次郎の舞台上での「声」と聞いたことがありますが、女形ではないので普通の地声での演技でした。いずれにしても、萬次郎を映画に出すなど松竹の事務方には思いもつかないことでしょう。だから撮影所を持たないメジャー映画会社なのです、松竹は。(この映画は東宝/フジテレビ。)

 そういえば、歌舞伎役者のクレジットには「(松竹)」って付かなかった。

 これをキッカケに萬次郎の映像作品出演が増えるような気がします。また、「三谷幸喜監督の映画『ザ・マジックアワー』にも出演した…」とイヤホンガイドに解説が入るようになることでしょう。快挙!

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2008年06月29日 21:55に投稿されたエントリーのページです。

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