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第73回歌舞伎鑑賞教室「神霊矢口渡」平成20年6月・国立劇場

 今年の鑑賞教室は観たいものがないなぁ、と予定に入れてなかったのですが、4月にこんぴら歌舞伎での市蔵があまりにもよかったので、市蔵めあてに切符を買いました。

 解説「歌舞伎のみかた」、今回は亀寿。客席から2人を舞台に上げるという趣向でしたが、司会者の才能があるようで上手にこなしていました。3年前の春猿・笑三郎おねえさんコンビの時もそうでしたが、解説者のキャラを活かした趣向はアリだと思います。菊五郎劇団のような集団にいると、なかなか自分だけ目立つような育ち方をしていないからかもしれませんが、亀寿ももっと自分らしさを出してもいいような気がする。男女蔵みたいに空回りしては意味ないけど、亀寿なら大丈夫そう。作者の平賀源内まで登場して分かりやすい部分もありましたが、やっぱり鑑賞教室の「解説」。舞台機構の説明など、大道具や俳優の登場など無くしてあまり意味があるとは思えない。視覚効果なのに口頭での説明に終止するのは不親切。そこまでやりたいなら超短縮版の「椿説弓張月」でもやればいいのに。

 「神霊矢口渡」頓兵衛住家の場ですが、前半は孝太郎が気持ち悪かった。気持ち悪いは失礼かもしれませんが、かなり色物系。目の周りのピンクもケバくて、背の縮んだ福助みたいでした。えええ?ってくらいに。女形が活躍する芝居だから頑張っているのはわかりますが、一場の芝居(上演)とはいえ、バランスが悪くなります。

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 竹本の歌詞にもありますが、孝太郎の演じるお舟は「おぼこ」なのです。いまで言ったらヤングティーン。ケバい化粧はよくありません。デパートや電車でおばあさんに限って厚化粧で、たった一人でPTA参観日のような臭いがプンプンするものです。声もミッキー・マウス菊之助も真っ青な作り声。孝太郎は何もしないからこそ品や若さがか香り立つ雀右衛門の舞台を観たことがないのだろうか?我童さんの舞台だって生で観ているはずの年齢なのに、なにを身に付けて来た役者なのだろうか。

 元々は文楽芝居ですから、あり得ないくらいにメインキャラクターの女性が男性に対して積極的になるのは分かりますが、おっさんの女形(=中年男性)が演じるのだから、それなりの工夫と芸と品がなくては勤まりません。孝太郎の悪い癖は、これだけ若い女性を演じながら、時々、意味も理由もなく台詞の言葉を縮めないで伸ばすこと。娘なら娘の台詞で通せばいいのに、時々、感情表現と勘違いして語尾などを伸ばすから時々サイコな花魁っぽくなる。せっかく「すし屋」のお里を何度もやってるのに。工夫のし過ぎは観る者には迷惑だったりすることを理解して欲しい。

 また、瀕死で振り回すのに刀を軽く持ち過ぎてます。これは團十郎など一部立役さんを除く歌舞伎役者一般に言えることですが、刀は決して軽くない物です。重いと言っていいのかわかりませんが、それなりに重量感を持たせる必要がある小道具だと思うのですが、ケガしている女性が軽々と持ちあげられるものではないし、抜いた刀を持つときと、鞘だけを持っているときとでは、見物から見て重量感=芝居上の意味が違ってなくてはならないのに、そういう持ち物に神経が行ってないから、余計に芸が無いように見えるのです。

 先月、都内の職場近くで孝太郎がドラッグストアで買い物している姿を見かけました。ええ!これが片岡孝夫の息子?ってくらい普通でした。ポイント3倍デーで33ポイント貰ってました。あまり見たくない歌舞伎幹部俳優の姿でした。

 市蔵の頓兵衛ですが、役が役だけにどう評価すべきなのか困ってしまいます。歌舞伎らしい役と言えばそうですが、取って付けたようなウソにならないように出来たのは手堅いと思います。

 亀寿は義峰と義興(亡霊)の二役ですが、解説の時はいい顔の素顔なのに、化粧が下手なのか義峰の顔はイケてなかった。お舟がなんで惚れるのかよくわからない。目張をぼかしたり紅を効果的に入れたりできないからか。幕切れにちょっとしか出ない義興の霊としても出ていて、解説も入れて3役も勤めていてエラいですが、大歌舞伎ではないからこそ出来る役ならば、大歌舞伎ではないからこそ出来る冒険や工夫をトライして欲しい。てうな役の宗之助は地味すぎ。あんなんだったら名題さんでもっとうまい人、たくさんいます。

 泥棒や殺人犯が主役の芝居が出せない鑑賞教室で、積極的な娘が主役の演目は極めて真っ当なチョイスなのでしょうし、お舟の積極性は笑えるのでよかったと思います。ちょっと難しい筋立ても、無料配布の冊子や解説で適切に説明されているのもいいです。でも、どこか報われない話。

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2008年06月14日 20:33に投稿されたエントリーのページです。

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