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すごいけど超凡人だった茂木健一郎

 今月、国立劇場で文楽公演を観ましたが、その際、購入したプログラムの巻頭エッセーを書いたのが茂木健一郎。脳科学者としてかなり優秀な方ですが、古典芸能に関してはガッカリするくらいに凡人だったようです。

 団塊の世代から40代くらいの世代(家族でビーチに行くとビキニパンツはいてビール飲んでるおとうさん世代)ってのは西洋かぶれMAXな人達ですから、茂木氏が平均的な学生よりも長い年数を過ごした大学時代に複数回も歌舞伎を観ているのはすごくいいと思うのですが、でも、古典芸能の話をする際に外国人を持ち出さないと話が組み立てられないというのは、文化的にすごく貧しいことだと思うのです。

 茂木氏の場合、歌舞伎は自主的に観たようですが、文楽の奥深い世界観はドイツ人に言われて気が付いた、と書いてあってガッカリ。しかも、ワーグナーにまで言及。イタリア・オペラは話の内容が下世話で単純すぎて文楽の比ではないので、比較論にしてしまうとワーグナーしか出せないんですが、という但し書きがあればまだ救いがあると思うのですが、権力者の庇護を受けているかいないかという点においても、ワーグナーと歌舞伎・文楽にはその本質においてかなりの相違点があるのでは?作品や興行を支えたオーディエンスの違いが一番顕著なのかもしれません。(文楽に関する映画を作っても、ヘルムート・バーガーに出番は無いでしょう。)

 日本という国も、国民も、古典芸能も、開かれたものであるべきだし、外国人の視点から学ぶものもあると思います。ミシュランの調査員に対して、外人に日本の味を評価できるか、とガイドブックへの掲載を拒否した鮨職人がいたそうですが、歌舞伎や文楽はそうであってはならないと思います。捕鯨のように意見がどうしても合ない(合せる気がない)ものもありますが、芸能の場合、商業演劇でもあることですから、客が入るとか関係者が認める、といった判断基準があるものは、外国人にも開かれているべきですし、それが文化であるし、歌舞伎なんかは一時期、日本人が観なかったところへ英語のイヤホンガイドを導入して集客に貢献したこともあるのですから、外国人にはオープンであるべきです。戦後、昭和の歌舞伎を救った外国人はバワーズさんだけではないと思います。

 しかし、外国人の視点を知りたければ外国人にエッセー原稿を依頼すればいいのであって、その外国人の母語をマスターしていたとは言いがたい日本人がその解釈と記憶を頼りに間接的に、何十年後かに、ああ言われてふとこう思った、という文章の書き方はいかがと思う。

 茂木氏に限らず、日本の古典芸能がいかに世界的にアピールするか、という文章に接する度に思うのは、日本人とは本当にあか抜けていないと思う。スポーツの世界でも、国際的な競技会で白人と同格に戦うと、結果はともかくニュースになり、雑魚のような扱いでもヨーロッパのサッカー・リーグに所属していて、ボールをかすめるようなプレーでも「見事にアシスト」と報道されます。

 古典芸能もしかりで、文楽で太夫さんが幼い子供の声を出しているのを見て笑っただけで、こんなもん1回観たらええわ、みたいな外国人がいる一方で、おもしろいと思って、何度も通う外国人もいる。後者のような外国人が理解している、という調査サンプルの極々限られた世界で目の前に歌舞伎やら文楽を理解している外国人を見てしまうと、何か外国から認められた錯覚に陥ってしまうのでしょうか?ビーチでビキニパンツ世代だと、特に。

 こういう思考(もし、そうだったら、ですが)は、おかしい。

 外国人だろうが、道産子だろうか九州男児だろうが、人が認めるから「いい」んじゃなくて、自分が「いい」と思ったら「いい」で、「いい」んじゃないでしょうか。外国につながっていてもいなくても、文楽の世界や奥の深さは、教えられるものではなくて、観る人の感性の問題。たまたま、そいう芸術の感性に国境や文化の違いを超えるものがある、というだけではないだろうか。

 だったら(屁理屈かもしれませんが)、日本人女性を妻に迎える外国人もたくさんいる。世界に認められる大和撫子や。ニッポンの女、いいとこ理解して大事にせんとあかんねぇ、と日本の男性は言わなくても許されるというのか?茂木氏に限らず、日本人男性の書くエッセーに本当の意味での世界観やオープンで本質的な価値観を感じられないことがあるのは、こういった理由もあるのかもしれない。

 茂木氏のエッセーに登場する“ドイツ人”は、東京に住んでいると歌舞伎が観られる、と述べたらしいですが、歌舞伎や文楽を衰退させた大阪の人は、どう考えていられるのか、個人的には知りたいところです。(吉本でええやん?)

 ちなみに、2月の文楽公演の客席をながめると、ビーチでビキニパンツ世代だけが見事に欠落していました。

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2008年02月28日 08:38に投稿されたエントリーのページです。

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