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2007年05月 アーカイブ

2007年05月01日

瀕死だった團十郎の闘病報告

最近、團十郎の闘病を取り上げる番組をふたつほど見ました。

まずは歌舞伎役者(+その家族である女優)が出演することも多くファン必見の番組でもあるNHKの「生活ほっとモーニング」金曜の「この人にトキメキっ!」(4月27日)に團十郎が生出演した際も、全篇ではありませんが娘(市川ぼたん)が撮影したいうホームビデオが放送されました。パリ・オペラ座での公演も成功したという報告がメインのような感じでしたが、同じビデオ素材は翌28日、フジの「土曜スペシャル・人体再生III」という2時間番組の冒頭約40分間で團十郎の白血病闘病が取り上げられた際も使用されました。

パリ公演が終わってから白血病に関する取材やインタビューをOKしたのは偶然ではないと思いますが、本当に奇跡的な闘病をあえて公開したのは日頃、團十郎がよく言う、自分だけの力でこの世に生きているのではない、といった人生観の反映でもあるのでしょうが、それにしても、あれだけの大病をした役者が正月に続いて今月の歌舞伎座でも『勧進帳』の弁慶を25日演じるというのは奇跡的だと思います。丁度一年前は体力を気遣って『外郎売』でのお目見えだったことを考えると。

上記テレビ番組での壮絶とも言える團十郎の闘病生活を見たおかげで、今月の弁慶は安心して見られます。(昨年末の『紅葉狩』の市川ぼたん出演、翌正月の松竹座での『勧進帳』弁慶という配役を最初に知ったときは、…、と考えてしまいましたが。)

戸板康二・著「歌舞伎の周囲」

昨年、鎌倉へ出かけた際、古本屋さんで戸板康二・著「歌舞伎の周圍」(圍は囲の旧字)という昭和23年に出版された本を見つけて買いました。

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古い役者の話も多く、幻の名優のことや、戦後の歌舞伎を取りまく状況などが伝わってくる本です。団塊の世代が古典芸能を見向きもしない世代である、と言われることもあるのは、戦後日本の文化的環境を反映しているだけなのか、とも思わせます。

さて、その中で個人的に一番おもしかったのが、この章。

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後年や現在の名前で言うところの「梅幸・歌右衛門・雀右衛門」に関する記述です。驚くべきことは、従軍により6年間も空白期間があり、尚かつ戦後、復員してから女形に転向した友右衛門(現・雀右衛門)が梅幸や歌右衛門と同列にこの時点で語られていること。本当にすごいことだと思います。

そんな従軍経験もある雀右衛門さんですが、数年前、楽屋入りする際、握手させていただいたことがあります。手のひらが綿のように柔らかかったです。

2007年05月14日

「團菊祭五月大歌舞伎」客席に熱気が無い夜の部

 今月の夜の部は松緑の「雨の五郎」以外、見る気がしなくて一等も桟敷も取ってなかったのですが、やっぱり「五郎」が見たくて(でも一階で観る気になれず)珍しく3階で見物しました。結果的に三階でよかったです。三階席の一番前に座るとA席部分の階段状通路を人が歩くと地震のように揺れて最初はちょっとドキっとしました。大地震の際は大丈夫なんだろうか…。

【女暫】
 萬次郎の女暫ってどんな結果になるんだろうか?と怖いもの見たさもありましたが、結果、かなりいい感じだったと思います。気張り過ぎず、玉さんのように冷たく距離感のあるような女暫でもなく。一生懸命なんですが息苦しくなることもなく、声が大きく明朗な台詞が効果的でした。意外(?)にも、暫なのに、あまり長く感じることがなかったのもよかったです。(玉さんの時は長く感じた。)海老蔵が赤い顔して腹出して、菊之助に鯰の松緑まで出ているのですから楽しい芝居であったことは間違いありません。(そうは言いつつも、今の團十郎の襲名披露の時の超豪華配役をついつい思い出しては比べてしまうのが悪いクセですが。ああ、すっかりオヤジの俺。)
 彦三郎、権十郎も出演し、三兄弟共演で羽左衛門さんも喜んでいることでしょうが、追善と言いいつつも、菊五郎と團十郎は萬次郎の台詞というか「挨拶」で触れられるだけ。寛容なのか冷たいのか、よく分かりません。
 前回、菊五郎が「女暫」を出した時は、実は芸者さん、という幕外の早変わり(復活としながらもほとんどオリジナル)まで付いてましたが、今回は特にそういう趣向はなく、幕外の挨拶と舞台番の三津五郎とのやり取りがやや長いだけ。昭和の終わり頃、梅幸が「女暫」を出したとき、舞台番が先代の勘三郎だったのでしたが、本来の幕外よろしく、完璧、花道の七三(旧七三と呼んだほうが的確か)でやり取りをしていると、何も見えない三階のお客さんが席を立ち始めたもので、大向こうさん達が「まだ終わってないよ」と、言われたからといってどうすりゃいいの?的なアドバイスを叫んでいたものですが、ちょっといびつな本舞台での幕外が当流(平成式)なようです。
 舞台としてはおもしろいのですが、他の演目もそうですが、今月の夜は見物に熱がありません。


【雨の五郎】
 今月、歌舞伎座夜の部はこれだけが観たかった。よかった!松緑はすばらしい!おじいさんに似ているとか隔世遺伝というと、最近はすっかり海老蔵のことばかり話題になっていますが、冗談じゃない、松緑だって体のキレや動きの良さと安定性はお父さんの辰之助に似ているような気もしますが、顔と表情の良さはおじいさん譲り。花道で引っ込む際、大向こうから「紀尾井町!」と声がかかりますが、本当に「紀尾井町」にふさわしい役者に成長著しいのが頼もしい。襲名当時は、あまりにも早い松緑襲名にファンもどっか引いていたような気がしますが、一昨年あたりからの活躍をきちんと見ていれば、今では誰もが文句無しでしょう。今の團十郎じゃないけど、名前が役者を大きくするいい例。旧平成の三之助の中では、一人だけ残り二人より年上ということもありますが、一番、歌舞伎役者らしい。
 実年齢30歳を超えているとはいえ、まだまだ若年の役者として、この所作事で五郎を立派に無理なく演じているのは感嘆に値します。いつものことですが、松緑は顔が上手なので、こういう歌舞伎の世界ならではの強くて粋でいい男が本当にしっくりきます。決して痩せていないのもプラスに作用しています。恐るべくどっしりしていると言ってもいいでしょう。特に筋立てがあるわけでもなく、見る側が分かっているという前提の役だけに厳しい役でもあるだろうに、指先からつま先まで、踊りながら神経と集中力がみなぎっている五郎は最高。こういう役の色香はもう何年かしないと匂うようには表現できないのでしょうが、それを補って余あるオーラと実力が松緑には備わっています。
 花道の七三で、本舞台に目配せする際の顔、目、表情がおじいさんを彷彿させるのが、昭和の頃から歌舞伎を見物している者にとって、なによりのご馳走でした。
 あえて難を言うならば、捕り手の辰巳くんがあまりにも現代っ子の顔をしていること。責めるべきことではないが、松緑が役になりきっていればいるほどに、段取りととんぼ切りで大変とはいえ、平成いまどきのお弟子さん顔が目立ってしまうのです。


【三ツ面子守】
 勘九郎が歌舞伎座の夜の切で踊り、ちょっと時間が経ってからNHKで放送されたもの以来の「三ツ面子守」。勘九郎と違って三津五郎のはフケ顔で小川真由美が熟女でありながら幼い子守娘してるようだし、お面の切り替えも勘九郎ほどにはおもしろくなく、とても「奴道成寺」経験者のものとは思えません。「女暫」は短く感じ、こんな短い所作事が長ーく思えるのはいかがなものか。ガッカリ。


【神明恵和合取組】(め組の喧嘩)
 團菊で何度も見ている芝居ですが、今回が一番つまらないと感じました。江戸の粋は世話物ほど出ているとは言いがたいし、水杯の場面以外、特に芝居として見せ所も無い。役者で見せるしかないんでしょうが、鬼気迫るようなピリピリ感も無い。こんな演目なのに(といっては失礼ですが)田之助さんや梅玉さんまで付き合って、豪華と言えば豪華なのですが、團菊はこの芝居、松緑と海老蔵に譲るべき時期ではなかろうか。今回が最後であることを願います。團パパと海老蔵が二人とも相撲取りの役で共演しているおもしろさはありましたが、そんなことに喜びを感じるくらいつまらなかった、ということです。芝居小屋の前で海老蔵が出て来た時、一瞬「あーちゃん今月かけもち?」と思ったくらい染五郎にソックリでした。はとことはいえ似てる。あの化粧(かお)と鬘(あたま)した時限定かもしれないけど。松緑の粋の良さと、着物の裾をさばいて座る動作が江戸の人らしい。時蔵の女房はいつもながら得難い。辰五郎(菊五郎)のような役は、女房を勤められる女形がいて成立するようなもの。(よ)


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