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2007年03月 アーカイブ

2007年03月11日

通し狂言「義経千本桜」レビューその1

今月の歌舞伎座は充実しています。昨年12月興行のように、半分以上若手公演のようなものではなく、全ての幕が大歌舞伎です。堀川御所とその塀外芋洗いの場面こそありませんが、最後の「奥庭」まで充実してます。猿之助公演のように「鳥居前」は若手にさせて、なーんてごまかしもなく、菊五郎、梅玉、福助は文字通りピンキリで朝一番から最後の幕切れまで出ています。下手な襲名興行より充実しています。

全体を通して観ると、本当の意味で光っているのがいがみの権太を演じた仁左衛門と義経を演じた梅玉。

梅玉の品格の良さは今に始まったことではありませんが、顔に年齢がちょっと出ていますが落ち着きのある上品さは、今の大歌舞伎では一番でしょう。仁左衛門の関西系演出の権太は最高です。「すし屋」についは詳しく別のエントリーで述べますが、直前に「道行初音旅」で藤太までやって拍手喝采を受けていました。【つづく】(よ)

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通し狂言「義経千本桜」レビューその2 昼の部

序幕 鳥居前
荒事風の「鳥居前」ですが、改めて菊五郎の役の幅の広さに感心しました。福助についてはあえて語りませんが、梅玉の抑制の効いた義経がすばらしく、この「鳥居前」の義経が「四の切」まで一貫しているのも素晴らしいこと。四天王の男女蔵はいいとして、亀三郎(松坂大輔そっくり!)と亀寿も行儀よくいいのですが、松江がよくない。義太夫なり学んでくれないと。玉太郎時代、数年前の鑑賞教室で解説をした時は顔よし話よしで好感が持てたのでしたが、確かに御注進のキレがイマイチだった。この幕の左團次もよかったです。この幕を見ているだけでも「天守物語」の赤鬼さんは左團次しかいない!と関係の無いことまで考えてしまいました。亀蔵が役名こそ違え“藤太”の役で出演。相変わらず声がデカい!菊五郎劇団でも、中村屋の芝居でも、とけ込む能力は非常に高いといつも思っております。

二幕目 渡海屋/大物浦
幸四郎が知盛ですから、びっちり固まった幕を期待していた部分もあるのですが、意外にも意外、藤十郎の局で肩が凝らずに済みました。帝を抱きながら赤い涙を流すも、世話物で脇役にまわった時に出しゃばるようなこともなく。幸四郎は幸四郎でいいのですが、形(型)をきっちりやればやれる程、自己完結バリアが良くも悪くも幸四郎。歌舞伎の幸四郎に独特の孤独さは健在です。自分は年齢的に白鴎の舞台は生で見た事がないからかも知れませんが、幸四郎の舞台、特に荒事や所作事を見ていて、叔父の松緑によく似ている、と思うのです。お父さん同士がソックリだったから当たり前なのかもしれませんが、幸四郎を松緑に重ねてしまうのが自分のクセです。でも、重ねれば重ねる程、いかにも大歌舞伎の役者だった松緑と幸四郎は違うのだ、と認識します。最初から青隈で“死人”の知盛とはいえ、松緑にあったような武士としての江戸時代的に美化された感のある悲壮感がなく、せっかくのクライマックスも段取りと化しているような感じがします。おまけに黒子(波が背景なので実際には青子ですが)の段取りが悪いのか、碇の綱が運命の残酷さと波に朽ち果てる決意の美でグルグルと落ちゆく筈なのにムラがあったのが残念でした。役者が熱演しても、こういうワーグナーのオペラみたいに、この2時間の幕の全てがこのクライマックスのためにある、みたいな所でトチって欲しくないです。興ざめでした。筋書きに誰なのかクレジットさえ出ないようなお弟子さんなのか大道具さんなのか知りませんが、そういう技をなんとかしないと。「大物浦」で帝をかついでいた光紀さん、大変そうでした。幕切れ、お役御免になった時のほっとした表情が印象的。局の衣装もあり、決して短い時間でもなく同情します。

三幕目 道行初音旅
この道行、菊五郎のも芝翫のも、いったい何度観たことだろう。ご両人の組み合わせ、御園座でも観たような記憶が…。悪役顔なのに静御前とは厚顔なりけり、神谷町。しかも、所作というか立ち振る舞いが町娘。静御前は本当のプリンセスとはちょっと事情が違うとはいえ、もっと優雅にできないものか。もうちょっと若かったら雀右衛門で観たかった。芝翫は品格に欠ける。無いとは言わないが。例えば、鼓を包んでいる紫の布を後見に渡すのに、まるでゴミでも投げ捨てるように後に持っていくような動作、納得できません。義経から預かった鼓を包む布。その場で織り畳めとは言わないものの、そういう丁寧さが欲しいもの。芝翫って「藤娘」でも笠の紐を筆に見立てて文を書くものの、その筆を硯に置くことなく紐(=筆)を捨てるようにあしらうようなことを平気でしたり、白髪の老婆の役なのに正座の手の位置が若い女形と同じ脚(太もも)の付け根に置いたり、歌舞伎や所作事の基本が分かっている人なのだろうか?とマジで疑問を感じさせてくれる人です。菊五郎はそつなく、手慣れたもの。藤太を仁左衛門が務めているのはいいのですが、仁左衛門に対する拍手は芝翫と菊五郎に対するそれを遥かに超えてます。役者の名前や屋号をからめた台詞も上手で言う事なし。あえて言うならば主役を食ってしまっていること。人気度では、ですが。ただ、昼の部では「鳥居前」で既にもう一人の藤太が出ているので、どうかと思う部分もありますが、だからこそ仁左衛門でよかったとも思います。清元延寿太夫、ちょっと久しぶりと思ったら白髪部分も増え、以前のようなガングロでもなくなっていたんですね。(よ)

通し狂言「義経千本桜」レビューその3 夜の部

四幕目 木の実/小金吾討死
最初、扇雀が小金吾と聞いて、絶対に期待できないと考えていたのですが、いい意味で間違ってました。普段は意地悪女の役なんかがピタっとはまっていて、臭い芝居をする某人気俳優なんかの芝居には無くてはならない存在かと思っていましたが、こんな前髪の役までソツなくこなしてしまうとは見事。でも、殺陣などは劇団芝居で本来すべきようなものですから、そういう面ではいいとは言えません。でも、汗かきながら見事にこなしていました。体力的には問題ないようです。若葉の内侍を演じた東蔵、もうちょっと若くて細い人をと思わないでもありませんが、品格において、そして小せんを演じた秀太郎とのバランスを考えると適切であったと言えるでしょう。秀太郎の関西弁、なんともいいです。自分の子が若君とがあまりにも違うので「えらいちがいやな」と呟くようなあたり、関西弁でこそ、でしょう。仁左衛門の権太も悪人ぶりがものすごくいい。加役でクソばばあを演じるのが得意なのは周知の事実ですが、権太でここまでやるのか、と思うくらい良かった。人間の二面性をさり気なく伏線として提示しながらも、夫として、父親としての愛情を描くことに成功している当代の仁左衛門も本当に素晴らしい。最後に弥左衛門(左團次)が登場しますが、運命のいたずらに翻弄されるがごとく、非常なる妙案を思い浮かべる前と後とのコントラストが絶妙です。

五幕目 すし屋
今月の通し狂言の白眉が仁左衛門の関西系「すし屋」。本来、大和の国の話であり、食文化を考えると上方風にやらない方がおかしいのですが「すし屋」を観て号泣しそうになったのは今回が初めてです。ファンとしては片岡三兄弟、孝太郎、そして関西歌舞伎の竹三郎さんまでが揃ってこの場を演じることこそが何よりのごちそうだったのですが、仁左衛門の権太は見事すぎます。ボキャ貧で表現が見つからないくらい素晴らしかった。たいまつの煙で目が染みるとかそういう表面的なことでない、懐の深い部分での愛情がすばらしい。最後、弥左衛門に刺され、肉親との正常な関係を築くことが出来なかった義経に代表される悲劇の登場人物(狐)をある意味、代表しているのですが、単なる悪人ではなかった権太の家族への思いやりが最後に、本当に泣かせてくれます。「熊谷陣屋」や長谷川伸・作の「檻」こそが泣かせる演目かと思っていましたが、仁左衛門が権太を演じる「すし屋」もすごい。この食いしん坊が「すし屋」が終わった後の30分休憩で、買ってある弁当を食べようか迷ったくらいに感動しました。左團次もお里の孝太郎(ちょっと化粧がケバいかな)もよかった。維盛を演じた時蔵も、耐えることと抑制と品格を求められるストレスが溜まりそうな役ですが、やはり品の良さが物を言います。今回の通し狂言のレベルの高さを代表する幕です。「木の実」(椎の木)から出し、権太の妻と子の説明があったからこそ効果的な「すし屋」。まあ、文楽では「椎の木」から「すし屋」」までは必ず休憩時間なく一気に演じているから、ある意味、常識ではありますが、歌舞伎の場合、どうしても上演時間の問題があるのが現実です。

大詰 川連法眼館・奥庭
川連法眼の妻明日香(田之助)が奥から登場し、川連法眼(彦三郎)が花道から登場し、法眼が妻の忠義を確認する段まで付いてます。勘三郎など、題名を無視したカットをして腰元の客静めトークでごまかされることも多いんですけど。菊五郎は、本物の佐藤忠信として登場している時の武士の腹構えというか気迫は見事。その割に狐になってからのうれし顔はちょっと色物。マジメになりすぎないという抑制を効かせるというバランス感覚でもあるのでしょうが。本物の忠信は目張に紅は入っていませんが、狐忠信になった瞬間、紅が入ってます。しかも、一旦消えた後に再登場する際、毛縫いはそのままのに汗で取れた首の白粉をきちんと塗り足しているあたり、菊五郎はすごい。相変わらずくねくね、猿之助と共演しなくなって早数年(十数年?)とはいえ福助もこの「四の切」の静御前は何度もしているのですが、主君義経への愛情と忠信への心を両立させるのは難しいのでしょうね、よっぽど。サグラダ・ファミリアみたいな芸。贅沢を言ってはいけませんが「四の切」は通しで出ている役者さん、ちょっとお疲れ気味ですね。「奥庭」は白狐との殺陣がちょっとあるだけで、横川禅司覚範(幸四郎)と勢揃いするだけですが、通し上演ならではの豪華さ。(よ)

中村芝のぶ vs 市川高麗蔵 眉毛抗争勃発か!?

地下鉄を降りて歌舞伎座の楽屋へ向う高麗蔵さん、マスクしてたけどバレバレ。素顔の眉毛、細ーい!と思ったのですが、「吉野山」で芝翫の後見で出ていた丸顔の芝のぶさん(素顔かかなりそれに近い顔)も、まあ、眉が細いこと細いこと。あんな細く精密な眉毛は、大田区の工場しか製造できないかと思ってました。

幕内で細眉コンテストでもやってるのでしょうか?

葵さんら竹本軍団はオープン●イ?と思わせるような刈上げ短髪コンテストを開催しているようです。(よ)

2007年03月21日

第34回「俳優祭」開催! しかも土曜日!

今朝、今度の俳優祭が5月26日(土曜日)であると知り、早速、切符の手配をしました。

4月27日(金)から電話受付が始まるようですが、通常のチケット争奪戦に加わってのでは負けは半分以上決まったようなもの。本興行とは異なり、幕内関係者でもどの場所のチケットが回ってくるのか分からないというのであまり期待はしていませんが、観劇歴25年強で初体験となる予定です。チケット購入代金も結構な値段ですが、物販などで使う資金+切符手配に対する「心付け」の方が上回りそうです。歌舞伎にはまると本当に散財いたします。(よ)

【追記】(5月13日)
チケットが届きました!一階ほぼど真ん中で舞台から数列目!よっかた。

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