2014年01月27日

橋下徹、古典芸能お局に事実上の「喝!」

 文楽の正月公演(大阪・国立文楽劇場)での入場者が大阪市による「基準」に達成しないため助成金減額が決定しました。

 文楽ファン(特に橋下徹に投票したり、前回棄権した大阪市民)は痛恨の極みでしょう。自分もやるせない。

 でも、関西(上方)歌舞伎が衰退した歴史を踏まえると、関西の古典芸能ファンは何をしているのか、と言いたい。いや、全国の古典芸能ファンにも言えること。

 文楽に限らず古典芸能お局様らのTwitter上のつぶやきを読んでいると、お局様の上から目線と彼女たちの限界もまた、古典芸能の維持に貢献していないことが明らかになった、という意味では橋下徹の政策も《罪》ばかりではありません。

続きを読む "橋下徹、古典芸能お局に事実上の「喝!」" »

2013年06月07日

しぇ〜! 鬼畜松竹実録系配役主義に走る???

 歌舞伎で政略結婚のために女を捨てるってたら、モックンじゃない民谷の伊右衛門。

 そんな伊右衛門に捨てられる女ったら四谷様。(お芝居の世界では「お岩さん」なんて云ったら素人丸出しでございますよ。)

 この2人をあーちゃん(染五郎)と、あーちゃんの一方的に捨てられた元フィアンセの実弟・カズヤス君が勤める7月の歌舞伎座。何もなければいいんですけどね。神田明神様のパワーは強いですし、両親が緋牡丹お竜に鬼平ですから心配してないですが…。

 代役・松緑を期待している私も伊右衛門並に鬼畜でございます。m(_ _)m

 それにしても新装再開場4ヶ月目!にふさわしい演目でございます。4日初日ですから、13足して17日の切符でも取っていただければ代役で観られる気がしてまいりました。(ワクワク)(大人のシャレですよ、お分かりとは存じますが。)

http://www.kabuki-bito.jp/news/images/kabukiza_201307.jpg

続きを読む "しぇ〜! 鬼畜松竹実録系配役主義に走る???" »

2013年06月05日

松竹映画部門、ここまで落ちぶれたか…『歌舞伎クラシック』

 先ほど、届いて放置してあった『ほうおう』誌を見てビックリ! 主に昭和の頃、NHKが劇場中継として放送した歌舞伎の映像を映画としてカネ取って見せる『歌舞伎クラシック』を東京・東劇限定で公開するそうな。

 言い訳(こじつけ)は「第四期歌舞伎座で見せた至高の芸」(同プログラム宣伝チラシより)を見せるためだそうですが、意味不明です。昭和のテレビ画質のものを、大画面に映して見せるのが「映画」なんでしょうか? しかもその多くはDVDとして発売済みのもの。富十郎さんと雀右衛門さんが大事に再演を重ねた『二人椀久』だって、平成9年のもので、ジャックが既に往年の動きがちょっとだけ難しくなってきてからのものだし、NHKにはお二人の『…椀久』のハイヴィジョン収録版だってあるだろうに、版権処理の簡単さに魔が差したのかDVDでとっくに発売済みのものです。

続きを読む "松竹映画部門、ここまで落ちぶれたか…『歌舞伎クラシック』" »

2013年04月04日

【創作】ショート浄瑠璃●中村棘蔵バス籠城の段

『女性セブン』最新号(2013年4月18日号)掲載「海老蔵あ然!大物役者バス籠城事件-銀座パレードの裏で」を読んで、創作としてショート浄瑠璃をこさえてみました。あくまでフィクションです。名称等は実在の人物・団体とは関係ありません。平成25年4月となった現時点では不適切な表現もありますが、先月当時のオリジナリティを尊重し、そのまま掲載いたします。

 内容もビックリですが、時蔵がいつから「大物役者」になっていたのか、驚きました。

- - - - - -

〽雨の降る 銀座の通りを 歌舞伎座再開場 祝いて役者が練り歩く 予定時刻になれども始まらぬ 往来集まる人々は まだ始まらぬと 不審なり

〽司会者・時光「しばらくお待ちを」と云うなれど 傘をさしたる人々に 冷たき雨は降りしきる

〽若き役者は傘ささず 見物人の前へ出る 支度を整えしも バスの中から出ようとせぬ 役者がひとり萬屋坊ちゃん中村棘蔵。会社の者へ 悪態 罵詈雑言。

棘蔵「これ岡咲、阿部子。なんぞこのような雨の中、わたしが傘もささずに外へ出て、風邪でも引けとも云うのかえ。けったくそ悪うて、ヘソで茶でも沸かして呑んでみるわいな」

続きを読む "【創作】ショート浄瑠璃●中村棘蔵バス籠城の段" »

2013年02月02日

富田鉄之助・著『錦を着た乞食人』

 1978年出版の富田鉄之助による『錦を着た乞食人ホカイビト—被差別歌舞伎論』という絶版本が図書館にあり読んでみました。江戸時代の幕府による政策や厳しい身分制度から明治の文明開化、そして現代(昭和)まで、歌舞伎という芸能がどのように政府・為政者によってその内面的な質を変化させられてきたという歴史論を扱った読み応えのある本です。そして、ここまで読めない漢字、初めて見る漢字が多い本もはじめてで、少々はずかしい思いもしております。

続きを読む "富田鉄之助・著『錦を着た乞食人』" »

2012年12月03日

武士の「同性愛」が分るとちがって見える代役・松緑の熊谷直実

 『万葉集』には武士による同性間の恋情を詠んだものが多い、と中本征利・著『武士道の考察』には繰り返し述べられています。武士の始祖ともいえる平将門らが朝廷への反逆行為と呼ばれる反乱をおこす前、7〜8世紀に詠まれた歌を集めた『万葉集』のことですから、武士なる者たちの身分は確立もされていない時代のこと。現代でいうところの「ホモセクシャル」とは異なる側面のほうが多かったであろう時代のこと。同書は武士がホモでもあった、というような主張だけをするようなものではなく、時代や身分的な背景、命を惜しまず武士としての道を歩むことの意味、はたまた、日本でも近代化するまでは残っていた(そして伝統的な祭りにしばしば見られる)男同士が若いうちに、異性ではなく、まず同性との人間関係・社会関係を築くためにあった制度などを総合的に考察した良書です。

 そんな『武士道の考察』を読んだ直後、ふと竹本網大夫(現・九代目源大夫)による「熊谷陣屋の段」のCDを聴いて、不思議な気持ちになりました。

続きを読む "武士の「同性愛」が分るとちがって見える代役・松緑の熊谷直実" »

2012年08月01日

文楽の敵は文楽ファン

 主にウェブメディアや一部新聞とはいえ文楽にかんする大阪市長・橋下徹の文楽協会に対する批判と文楽支持派との攻防が続いています。

 つい先日も橋下市長によるブログ記事『一番問題なのが自称インテリ層を中心とする文楽の取り巻き。文楽は大切だ!としか言わず、観客を集めるプロが文楽の周囲にいない - 2012年07月29日』において大阪市の予算が文楽を支援する論理的正当性の欠如を指摘する主張がありました。

 その記事に先立つこと1ヶ月、橋下氏は市長として2012年6月28日付けで大阪市のホームページ上において『文楽協会への補助金について』という「主張」をされています。

続きを読む "文楽の敵は文楽ファン" »

2012年07月06日

猿翁、中車(香川照之)は歌舞伎のためになっているのか

 先月の澤瀉屋襲名披露興行初日もそうでしたが、今月も猿翁と息子・中車の“共演”だけが話題になっています。正確には断絶を乗り越えた親子と今月限定とはいえ市川宗家(團十郎・海老蔵)の出演の両方が取り上げられられましたが、相変わらず、亀治郎が猿之助になったことはスルーされまくりです。歌舞伎役者が名前を継いだことよりも、40歳を過ぎて息子のため親のため歌舞伎俳優デビューを決心した香川照之のニュースバリューは認めるが、あまりにも新・猿之助が気の毒に思えてなりません。

 個人的には父親としての役割を果たしてこなかった男に、人間としての魅力は感じません。香川照之は生まれた時から父親がいなかったからこその父親へあのような感情を抱いていたのかもしれませんが、本当に「美談」なのでしょうか。

続きを読む "猿翁、中車(香川照之)は歌舞伎のためになっているのか" »

2012年07月04日

文楽を救うには、松竹株式会社の恩返しが必要では?

 ブログサイト「アゴラ」に島田裕巳による中途半端な文楽擁護論『文楽を救うには、歌舞伎の恩返し』が掲載されているので、コメントがてらの駄文を書きます。

 島田氏の問題提起はいいとして、ブログ記事を通して時制がバラバラなのが残念です。確かに昔は世間を騒がす事件がすぐに歌舞伎でも文楽でも舞台化されたような時代はありました。でも、戦後の役者は河原乞食ではなく人間国宝に指定されることもある歌舞伎俳優。歌舞伎は、日本政府の援助などを得て外国公演もする《ニッポンの芸能》なのです。夏が来て、今年もすでに公文協による歌舞伎の地方巡業が始まりました。そんな俳優が、東電女性社員殺人事件やら、不美人でありながら結婚詐欺をはたらいた上、連続殺人をしたという女性の話やら、下世話な素材の演目を出せるはずがありません。日本の古典芸能はオペラではありません。

続きを読む "文楽を救うには、松竹株式会社の恩返しが必要では?" »

2012年06月05日

澤瀉屋の新しい門出

 昼の情報番組までが注目する澤瀉屋の襲名披露興行、香川照之の市川中車襲名が一番の注目とはいえ、珍しい三代襲名披露興行。やろうと思ってできることではありません。高麗屋がもうちょっとしたら30数年ぶりにできるかもしれないとはいえ、事件やスキャンダルではなく歌舞伎が注目されることはうれしいことです。

続きを読む "澤瀉屋の新しい門出" »

2012年02月23日

中村雀右衛門、本日午後永眠

以前より入院されていた東京・中央区の某総合病院にて中村雀右衛門さんが亡くなられました。

本当に悲しいです。

波乱の人生で、気遣いも相当だったでしょうから、そういったしがらみのない世界へ行かれるよう祈りたいと思います。

続きを読む "中村雀右衛門、本日午後永眠" »

2012年02月08日

三谷幸喜は文楽を救えるか

三谷幸喜が文楽の新作を書くことで、橋下徹・大阪市長が打ち出した芸術分野への助成金カットから「文楽」を救う、というニュースがありました。『其礼成心中』というタイトルで8月に初演されるそうです。

かつて、井上ひさしがモリエールの『守銭奴』をベースに書いた『金壺親父恋達引』という文楽作品があり、NHKで放送された時のビデオは実家のベータマックス・ライブラリーの隅にまだあるはずですが、文楽の新作と聞くと、文楽座の本気度が気になってしまいます。『曾根崎心中』のような復活物で成功しているものもあるとはいえ、上演を重ねて磨きを入れるのが古典芸能。一度や二度の上演で途絶えるような新作は、意味があるのだろうか、と思えてきます。もちろん、そうなるとは限りませんが。

続きを読む "三谷幸喜は文楽を救えるか" »

2012年02月07日

『三島由紀夫と歌舞伎/三島由紀夫研究 (9)』鼎書房・刊

鼎書房から刊行されている松本徹・ 佐藤秀明・ 井上隆史の三氏が「責任編集」者となっているシリーズの『三島由紀夫と歌舞伎/三島由紀夫研究 (9)』を読みました。

冒頭の国立劇場・織田紘二氏と責任編集者らとの「座談会」が非常におもしろくて、時間が経つのを忘れたくらいです。織田さんといえば、三島由紀夫が書いて国立劇場で初演された『椿説弓張月』には執筆段階から関わっていたためNHKの番組も含め、三島との歌舞伎制作秘話などは得意(?)とするところですが、この本の対談は本物の演劇関係者の秘話です。この研究書でさえ、ところどころ、あえて活字にしなかった発言があろうことがぷんぷん匂いってきますが、織田さんの立場が変化したこともあるのでしょう。演劇関係者ならではのドロドロした秘話が展開されています。

続きを読む "『三島由紀夫と歌舞伎/三島由紀夫研究 (9)』鼎書房・刊" »

2012年02月05日

片岡秀太郎・著『上方のをんな』

女形が好きで、女形らしい女形の一人者といえば片岡秀太郎と思っておりますので片岡秀太郎・著/坂東亜矢子・構成『上方のをんな 女形の歌舞伎譚しばいばなしを読みました。

秀太郎さんの正直な言葉の数々に驚きながらも、改めて「芸」は人柄でもあるのだと感じました。

同時に、秀太郎さんのご自身のことまでも客観的な視点から見ることができる能力には、ひたすら感嘆するばかりでした。歌舞伎俳優じゃなかったら演出家として成功していたに違いない、と思ってしまいましたが、以前テレビで拝見した松竹上方歌舞伎塾の講師ぶりからすると、次世代の若い歌舞伎俳優の「演出」は既に得意とされる分野であることは間違いないようです。

続きを読む "片岡秀太郎・著『上方のをんな』" »

2012年02月02日

武智歌舞伎を知る手がかり ― 岡本章・四方田犬彦 編『武智鉄二 伝統と前衛』

 歌舞伎好きであれば「武智歌舞伎」について多かれ少なかれ、どんなものだったのだろうか、と気になるものではないでしょうか? 目にするわりには実態が分らない上に「武智歌舞伎」と関連づけて語られる中村富十郎、中村雀右衛門、坂田藤十郎が「武智歌舞伎」について語っている活字を個人的にはほとんど見かけたことがなかったため、岡本章・四方田犬彦 編『武智鉄二 伝統と前衛』は、ようやくたどり着いた「武智歌舞伎」の残り香とも呼べる貴重な読み物です。

残念ながら、今回も「武智歌舞伎」の舞台の写真などはひとつも掲載されていませんが、富十郎や藤十郎による貴重な証言が収めれているのはうれしいことです。特に富十郎の証言は亡くなる半年前のことだそうです。

続きを読む "武智歌舞伎を知る手がかり ― 岡本章・四方田犬彦 編『武智鉄二 伝統と前衛』" »

2011年10月24日

辰巳くんがいなくなった菊五郎劇団

 先日、国立劇場で十月歌舞伎公演、『開幕驚奇復讐譚』を観ました。

 菊五郎劇団の通し狂言ですから、もちろん立ち回りもありました。その立ち回りに夏、自殺未遂で重体と報道され、その後、亡くなられた尾上辰巳くんの姿は、残念ながら、ありませんでした。

 おそらくここ10年くらいしか舞台で拝見していない辰巳くんですが、菊五郎劇団の芝居で彼が捕り手などの1人として登場しないと、こんなにポッカリと穴が開いてしまうのかと、愕然としました。

 菊五郎が何歳になろうと、何度弁天小僧を演じようと、稲瀬川の場面で捕り手のリーダーの音吉さんがいて、屋根上には菊十郎さんが登場して、『三人吉三』の陰の声はいつものあの人で、と劇団芝居が好きな身には、あんなに若くして舞台からひょっこりいなくなる役者がいることが、こんなにさみしくて、切ないものかと…。

続きを読む "辰巳くんがいなくなった菊五郎劇団" »

2011年10月23日

国立劇場開場45周年記念シーズン開幕と尾上菊五郎

 今年開場45周年の国立劇場ですが、今年度は周年シーズンとして今月から来年4月の大劇場における歌舞伎公演を中心に盛り上げようとしております。来月の坂田藤十郎を除けば、今月から4月まで(公演のない2月を除き)人気役者が主演(座長)のラインナップ。最近でも翌々月の演目や座組みが決まらない伝統の松竹において、月々の公演ではなくシーズンとして「売り」に出た国立劇場(日本芸術文化振興会)のほうがよっぽど民間的。

 45周年シーズンのしんがりは菊五郎劇団による復活風新作歌舞伎『開幕驚奇復讐譚』。いつものことながら、伝統歌舞伎の手法を使いつつ色々な表現を試しているような一種実験劇場的な意味合いも多分にあり、古典的な歌舞伎のみを好むご見物衆にはアピールしないと思うのですが、自分はなぜか許せてしまいます。

続きを読む "国立劇場開場45周年記念シーズン開幕と尾上菊五郎" »

2011年01月09日

十二月大歌舞伎 日生劇場

 今月は歌舞伎座が建て替え工事中のため、珍しく日生劇場において、菊五郎劇団による歌舞伎公演となりました。出演者、配役、演目数、上演時間を考えるとちょっと物足りない気もしましたし、『達陀』を日によっては2回も出すプログラミングはかわいそう、とも思いましたが、気になって出かけました。通常の歌舞伎公演と比べると、劇場慣れ(もしくは歌舞伎公演慣れ)していない人たちと、団塊の世代あたり以上の年齢の男性客が多く入っているようにも見えた客席で、舞台写真の販売もなく、いろいろな意味でアウエー感が漂う公演だと思いました。

 個人的なことになりますが『合邦』とは不思議な巡り合わせがあるようで、はじめて観た文楽公演、はじめて歌舞伎座で観た歌舞伎の演目に、それぞれ『合邦』が入っていたのをハッキリ記憶しています。その当時は私自身も数え年で「つず(十九歳)や二十歳(はたち)」になるかならないかの年齢で若かったのですが、今回の公演で音羽屋三代の玉手御前を観たことになります。同じ役を血のつながった三代の役者で観る、というのも、今回がはじめてでした。

続きを読む "十二月大歌舞伎 日生劇場" »

2009年07月29日

英語で普通名詞化した Kabuki

 2009年7月26日(現地時間)で放送されたアメリカのニュース番組「This Week with George Stephanopoulos」におけるノーベル賞受賞の経済学者ポール・クルーグマンの発言に以下のような部分がありました。

...all of that we’re seeing, all of the Sturm und Drang, and all of that is actually just Kabuki; that in the end, the Democrats will come together. What we’re seeing is jostling for the shape of the final outcome.
(前略)我々が目撃している、全ての「疾風怒濤」(=騒動)は、本質的にはカブキに過ぎません。最終的には民主党議員は団結することでしょう。最終的な法案を形づくるための駆け引きを目撃しているに過ぎないのです。

続きを読む "英語で普通名詞化した Kabuki" »

2009年06月25日

松本清張・著『神々の乱心』

 前日、NHKの番組で社会学者の原 武史がこの小説について語っているのを見て、興味を持って読んでみました。個人的には、原氏の解説のほうがよっぽっどおもしろいと思ったくらいなので小説としての好みはともかく、それでも内容だけに引き込まれるように読みました。

続きを読む "松本清張・著『神々の乱心』" »