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通訳者は「高給取り」であり続けられるか

 数年前からですが、国会では速記者となるための速記研修生の新規募集を停止しました。機械化された速記が準備されているからです。身近なところでは、ここ1〜2年でスマートフォンやタブレット端末などにおける音声入力技術が進化を遂げています。向こう10年くらいで持ち運び可能な端末機器が同時通訳作業をおこなうようになったとしても、個人的には驚くことはないでしょう。ウェブ翻訳やパソコン・ソフトなどによる翻訳が不完全ながらもビジネスの現場で利用されているのですから、それなりに使える無料か低額の通訳アプリが登場したり、OSに組み込まれることも時間の問題ではないかと思われます。(現実に通訳・翻訳アプリは存在していますが、通訳者のように半日、1日単位で問題なく稼働できるかどうかの確認は取れていません。)

 翻訳の世界では単価を下げろというプレッシャーは強くなる一方ですが、通訳業務については翻訳に比べればある程度は維持されているかと思いますが、逐次であれ同時であれ、機械化された通訳が「使える」レベルまで向上した場合、人間の通訳者が必要とされる場面は、少なくなることでしょう。

 とはいうものの、こう書いていて、あまり現実感がわかない自分がいる一方で、スマホなどの日本語認識能力は既に高いのですから、これが自動翻訳と連動したら、通訳まではいかなくても、1人だけ英語がよく分らない会議出席者が、端末が自動的におこなう翻訳を目で追いながら参加するといった世界は、もうすぐだと思います。しかも、無料か低額のアプリの活用で。機械化された速記が可能であれば、議事録とりも一台で済むことになるでしょう。

 きちんとした会議での人間による通訳がなくなるとは思いませんが、ビジネス世界ではありがちな無駄な会議、無駄に長い会議、通訳者がいてもいなくても強引に外国人役員が勝手に始めようとする会議など、逆に人間の通訳者からしたら「どうぞ」と喜んで役目をゆずってあげたくなる機会は増えるのではないでしょうか? 通訳者がパナガイドを持ち運ぶような会議は、実務者が通訳ができる端末を持ち運ぶような会議にしていただいたほうがいいかもしれません。

 実際、どのような未来が通訳者を待っているのかは分りませんが、通訳を機械もある程度以上できる世の中になっていくことだけは確実でしょう。技術が成熟するまでは時間がかかるかもしれませんが、音声認識技術の進歩は目覚ましいのですから、インド人やシンガポール人の英語が分らない!と文句を言いつつもギャラだけはしっかり貰う通訳者よりも標準的ではない英語の発音やイントネーションについては、機械のほうが得意とする日も来ることでしょう。

 悲観する必要はないと思います。翻訳の仕事では既に翻訳プラスセンスのある訳文を書く校正力やコピーライティング能力を求められるようなポジションはありますし、秘書でありながら必要に応じて通訳もする、ということも多々あるのですから、私は通訳者だから通訳しかしません、というスーパーウルトラ・プロフェッショナルな通訳者になるか、他のこともします/できます的なマルチ(コンパチブル)プレーヤーになるか、若い方や、通訳・翻訳の仕事に就きたい人は先のことを考えたほうがいいのかもしれません。

 私も含めて、多くの人には英語の通訳者が大量かつ急に要らなくなる日が来るとは考えにくいと思われますが、先日、映画『フレンチ・コネクション』をDVDで見たら、タイピストが多くの警察署内のシーンで登場していました。ある程度以上の年齢であれば、英文タイプを専門学校などで学んでいた時代を覚えていらっしゃることでしょう。通訳を専門の学校で勉強していた時代もあったんだ…、と後世の人たちに言われることはない、と断言できるのは、きっと今年12月にやってくるというアセンションを信じる方々だけではないでしょうか。五次元へ移行した世界での言語環境は想像もつきませんが、神戸空港へ着いて三宮ゆきモノレールに乗ると最初の駅が「京コンピュータ前」であるのは、現実です。

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2012年06月03日 21:18に投稿されたエントリーのページです。

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