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Underwear は下着(肌着)とは限らない

 少し前ですが、ドキュメンタリー番組を見ていたら、明らかにモモヒキ(ズボン下、タイツ、レギングス)のことを指しているにもかかわらず、字幕訳が「下着」となっていたことがありました。

 英語上級者でも、ちょっとした意味の齟齬に気が付かないケースがあるようで、翻訳者でも通訳者でも、アレ?と思うことがありますが、underwear の本当の意味についてもしかりです。

 そのドキュメンタリーで underwear の話をしたのが、独りで冬なのにとある政治家が自宅を出るのを張っていたアメリカ人のニュースカメラマンなのですが、上半身から順番に自身の防寒体制について説明していて、明らかに下半身部分のところで long underwear と言っていたにもかかわらず「下着」と訳してました。

 確かに、英語の辞書(Merriam-Webster) を調べても"clothing or an article of clothing worn next to the skin and under other clothing"という定義しかなかったりしますので、文字通り「下着」と訳すのが defensive とはいえ正解なのかもしれませんが、英語ネイティブによる実際の用法とのズレがありすぎます。

 そのようなズレを理解されている翻訳者もいるためか、アルクの辞書(Web版、CD-ROM版)には underwear の訳語として「パンツ」という言葉も記載があります。さすがアルク、と褒めたいところですが、もっと正確には、下半身用の肌着、という意味になります。

 別な見方をするならば、英語圏(特にアメリカ)において上半身に underwear を着用するのか、という問題に行き当たります。同じアメリカ本土でも、夏の湿度が日本並に高い東海岸や南部はともかくとして、湿度が低い西海岸方面においては、ワイシャツの下に肌着(T-shirt)を着用しない人もたくさんいます。

 現にグーグルで "in a T-shirt and underwear" と検索すると、たくさんの結果がでることからも、underwear が下半身用の肌着(パンツ/パンティ)の意味として使用されている現実がわかりますし、画像検索をすれば更に明確な確認ができます。

 ちょっとしたことですが、自分が当たり前と思っていることでも、そうなんだろうか、という素朴な疑問と好奇心を持っているかどうかが、外国語学習においても、通訳/翻訳業務においても、より正確なニュアンスで訳せるかどうかの分岐点となるようです。

 日本語でも「下着」ドロボーといった場合、ババシャツなど上半身専用の肌着にコーフンして泥棒をはたらく犯罪者の話って、聞いたことありますでしょうか?そういう意味においては明らかに下半身ウェアとしての underwear を「下着」と訳しても誤訳にはならないケースもあるのでしょうが、英訳する場合、上半身用の肌着を underwear などと訳した場合、コンテクストが補っていない限り、オーディエンスは「パンツ」と理解することもある、と通訳者は知っておくべきでしょう。

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コメント (3)

匿名:

他の英語圏の国ではわかりませんが、少なくとも米国ではモモヒキやババシャツのことも英語でunderwearと言いますよ。”long underwear"で画像検索すると男性用、女性用共沢山出てきます。

Yoshi:

アメリカ人男性が少なくとも【口語】で underwear と言った場合、かなりの確率で underpants と同義語である、というのが自分の経験値です。アメリカの大学でボートやってた時、コーチと学生でウェアの下に underwear はかないのか!?でコーチと若い世代で意見が分かれたこともありますし、昔のアメリカ人上司は、奥さんアメリカに帰ってる間なにしてるの?と質問されて underwear でウチの中歩いてる(=パンツ一丁でうろついてる)、と答えていました。

話者の属性(ジェンダー、老若、国籍など)やコンテクストで微妙に日本語の訳語を変化させるべき英語表現のようです。

「下着」はオールマイティな誤訳ではない訳語ですが、ユーモアやちょっとした会話では明確に「パンツ」と意識することが必要なケースもあるようです。

(記事の最終段落、ちょっと不適切な表現になっているかもしれません。m(_ _)m)

ミッキー:

もちろん例外はあるでしょうが、underwearと言えば下半身用だと思っていました。肌着のシャツはundershirt。私はpantieと言うのがなんとなく恥ずかしく、ついunderwearと言ってしまいます。

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2010年05月05日 05:05に投稿されたエントリーのページです。

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