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再指名されないフリー通訳者たち(中)

ちこく・へいき男

 遅刻しても許される案件がある、とは言いませんが、絶対に遅刻して欲しくない案件はあります。ビジネスの場合、他社や外部の方々をお招きしているかどうかが、ひとつの目安となります。そういった案件に遅刻してきて、謝罪さえ口にしなかった人を知っています。しかも、そういう人にかぎってスクールで教えていたりする人だったりします。スクールでも授業にはギリギリか遅れ気味、という話をそのスクールの生徒さんから聞いたこともあります。

すたみな・なさすぎの局

 国際会議が目白押しのため、東京では多くの「S」クラス通訳者が拘束されていた時期に急に「S」クラスの通訳者を社内通訳業務のパートナーとして選ぶ必要に迫られ、1人なんとか見つけたまではよかったので、来てみてビックリ。年齢的にもベテランなはずなのに、同時通訳で苦しくなると7〜8分でチェンジを繰り返すスタミナ不足。ええ??内容はともかく2日間連続会議案件だたのでスタミナ的な配慮からあえて「S」指定したのに、意味ナシでした。

 某大手スクールで学び講師まで勤めたた経歴の方だそうで、確かに高いスキルはありそうでしたが、業務態度最低で、事前資料は自分の番でない時に読むは、資料を読んだら日経読むし最悪でした。もちろんパートナー通訳のための数字取りなんてしてくれませんでした。ブースの中ではそんな無愛想でヤル気ゼロに近い状態でしたが、途中、ワークショップ形式で実務者に囲まれて逐次通訳になるとニコニコ。別人変身術だけは現役でした。

 スキルの高いプロ通訳者でも、モチベーションが落ちてくると、事前の資料読みをしなくなり、現場入りが遅れて、業務態度も悪くなって、それで指名されることも少なくなったあげくにこうなるのか?と考えさせられる人でした。彼女が女性でなかったら、その場で怒りまくっていたと思います。しかし、上記のような国際会議繁忙期でもあり翌日のことを考えると言いたいことも言えなくなる…。(どっちが客なんだ!?)処世術だけは「スーパーS」クラスな方でした。


けいたい・メル子

 日雇い的なアサインメントで働くプロ通訳者に蔓延している症候群に、同時通訳業務中でも携帯電話や携帯メールの着信チェックがあります。確かに仕事をもらう立場にありますから、仕事は欲しいと思います。エージェントによっては即答しないと別の人に打診される、という心配もあるといいます。しかし、雇う側からすれば、決してお安くない料金を払っているのですから、止めていただきたいもの。集中力を必要とする同時通訳業務をする前提で決して安いとは言えない料金をお支払いするのに、別の関係ない会社の関係ない案件のために、自分の会社に対するサービスを削るような行為ですから。

 一度、同時通訳しながら携帯チェックをしている方がいたのでエージェントに抗議したら、その通訳者が事実上そのエージェント専属状態で稼働していることが知られている存在なのに、「もしかしたら他のエージェントとのやり取りだったかもしれません」と逃げ口上。メールの向うが誰かじゃなくて、仕事に集中していない業務態度が問題なんですが。

 どうしても気になるのであれば生理現象(トイレ)を装って退席してチェックされればいいだけだと思うのです。あまり頻繁に退出するのはよくないと思いますが、仮に昼休み後5時までブースで2名体制の同時通訳をしたとしても、2〜3回の短い退席くらい、何でもないと個人的には思います。暑いブースだったり、会場がホテルで冷房が効き過ぎていたりは辛いですから、スマートにメールでも着信でもチェックして、心身ともにすっきりしたほうがいいと思います。「S」クラスで3名体制の仕事しか受け付けないご身分になれば、気にせず堂々と1/3くらいの時間はゆっくりできるようにもなりますが、「A」クラスとしての仕事にまず集中することなくして「S」になれるとは思えません。

 医者なら不注意で治療行為にミスがあったら裁判沙汰なのに、通訳はテキトーでラクな商売のようです。High-paying job that allows McJob kind of attitude. 建前はともあれ。


しりょう・むし雄

 こういう人も確実に多いです。事前資料を読んでない通訳者。もしくは、文字通り「目を通す」だけの人。

 通訳スクール時代、宿題を一生懸命こなしたような人でも、今日はA社、明日はB社といった生活が長くなると、どうでもよくなるのでしょうか、資料無視で単に現場にやって来るだけの人が少なくありません。(契約違反と呼べる行為であり、個人的には減額請求を求める事由に相当することもあると考えます。場合にもよりますが。)知り合いにもいますが、フリーランスがライフスタイルや能力的に自分に合わないと考えるなら、短期や中期の派遣業務をするって方法もあると思うんですが。

 どうしてもフリーにこだわるなら、1日や半日の案件でも《プロに徹する》術を身に付けて欲しいもの。(こう書くと厳しいだけの嫌な奴、と思われるかもしれませんが、定点観測的にフリー通訳者の当たり外れの激しさに翻弄されたらご理解いだだけることでしょう。)


りんしょく・けち彦

 それなりのエージェントであれば、クライアント側がメール添付で送った文章でもプリントアウトした上、宅配などで通訳者へ転送するルールを徹底しているため、フリーの通訳者が個人でプリンターやインクの心配をする必要は無いものですが、そういうことに慣れすぎて、自腹で1枚も印刷したくない通訳者がいたります。

 今回の案件、事前資料がないのでお送りする用語集と弊社のホームページで業務内容から役員の名前まで勉強してください、と心苦しくも他に対処方法がないためリクエストすることもあるのですが、何回お願いしても、実際にホームページを印刷して持ってきた方は1名。エージェントとしてプリントアウトを送付した事例はゼロ。

 企業の特性でもある業務内容や、実際に同時通訳ブースの窓越しに対面する役員の名前は日英で書いてあるのですから、はじめての方には立派な資料だと思うのですが、アサインされた《会議の資料》でないと納得しない方が多いのでしょうか?でも、通訳者がパフォーマンスを最大限にするための資料は《会議資料》だけじゃないんですけど…。

 とある男性通訳者は、自分に「俺、金持ちなんかならなくていいんです」という話と自宅プリンターが恐ろしく古いことの言い訳を同じセンテンスでしてくれたことがあります。金持ちじゃないから年間2百件以上の受注実績アリなのか?と突っ込みたくなりましたが、しませんでした。そう、狭い業界。相手が分かってないだろう、と勝手なことを言っても、相手はその仲間から実情を知らされていたりするもの。通訳者同士での話が途切れたら、案外そんな理由です。


ぐるめ・すき代

 個人的に好きになれないのが、このタイプ。常に「おいしい」仕事を期待している通訳者。

「おいしい」の定義がなんであるかは人それぞれだと思いますが、難易度が低くて、ラクで報酬だけは規定通りもしくは規定以上にもらえる仕事のことなのでしょう。場合によっては海外出張案件だったり高級ホテルやレストランでのディナー通訳だったりする人もいるのでしょうが。

 通訳ってのは、とか、仕事ってのは、と「そもそも」論を説くつもりはありませんが、「おいしい」仕事をしたいならアドバイスします。

 1.フリーなら、業務態度などを改善して繰り返し指名される通訳者になる。実績や評判は最大の味方にもなる。
 2.社内通訳者になる。ゴールデンウィークがあっても、年末年始があっても、固定給だから給料は出る。役員や社長専任なら、高級店での会食も多い。

 裏技として、女性ならばエロおやじのセクハラを積極的に受け入れるってのもあることもないわけではないようです。昔の職場で、通訳能力どころか英語能力もかなりイマイチなため、そういうホステス手法でナンバーワンのおじさんを手玉にとっていた女性がいました。潔癖で上昇志向の強い女性ほど嫌っていましたが。ただし、エロおやじとの年齢差が必須条件となります。60歳代の男性役員に50歳代の女性通訳者が付いて出張した場合、フルムーン旅行になるのでイヤだ、と断わるケースもあります。(男で通訳なんかしてると、そういうニッチなニーズに対応することもあります。ヤキモチ焼きの奥さんを持つ外国人の場合、男性通訳者の方が安心なので雇用されやすかったりするというケースもあります。)


(つづく)

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2009年09月24日 22:00に投稿されたエントリーのページです。

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