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再指名されないフリー通訳者たち(上)

今回は《メルマガ》風にフリー通訳者たちの生態を書いてみたいと思います。

 フリーで通訳業をおこなうメリットはたくさんあると思いますが、仕事量が減ったり、終業直後は「二度とこんな会社来るものか!」と思っても再指名されないと寂しいと感じたりすることもあるかと思います。

 発注サイドからすると、通訳業務リテラシー《ゼロ》のコーディネーターが指示を適切に伝えてなかったりすると、派遣された通訳者のパフォーマンスが悪くなくても印象が悪くなったり、場合によっては、その案件で取引が終了したり、といったことがあるので、通訳者が気にしても得なことはなかったりするケースも少なくないと思います。

 しかし、中には通訳者ご自身が《出入り禁止》の理由だったりすることもありますので、こっそり、お教えします。当てはまるケースがあったら改善するだけで、指名10倍・年収20倍?(勝間和代さんじゃないので保証はできませんが。)


たまたま・たま子さん

 エージェントによる通訳者のカテゴリー分けがS、A、Bだったとした場合、同時通訳のできるAクラスの方をお願いするケースがビジネスの現場では多いと思いますが、たまに最大手スクールの最上位のクラスを完了されて、通訳スクールのパンフレットや出版物に出まくりだったりする人が、なぜか「A」クラスとして派遣されてきたりすることもあります。

 たまたま、その日だけ開いていたので、普段は連絡のない以前に登録だけしておいたエージェントからのオファーに乗った、みたいな理由だったりするようですが、確かにスクールで身に付けたと思われる defensive な訳はツッコミを許しませんし、いろいろな面でソツなく安定していて見本的な存在でもあるのですが、「S」でもおかしくない存在のため、やはり「A」としての派遣だとモチベーションがあまり上がらないことも多いようで、資料や会社のホームページを勉強してきてくれなかったりすることもあります。別な言い方をすれば、通訳者として大切な仕込みである資料読みをサボったり、初めて派遣される企業のビジネスについて予備知識を仕入れなかった場合、スキルそのものがどんなに高くても現場では《ただの人》になってしまうことを教えてくれる存在でもあります。

 それでも再指名して呼びたいと思うこともあるのですが、ご多忙のためか逆に指名されることを拒否されているのか、再会することは、ほとんどありません。


フリーハンド君

 かつての自分を考えると人のことは言えた義理ではないのですが、自らを律する何かを持って《プロ》通訳者として稼働していただかないと、一緒に組む側は当惑してしまうのも事実です。

 若い人たちのフリートークを同時通訳する案件があり、通訳能力がどんなに高くても完璧なパフォーマンスなどあり得ないことが経験値から分かっていたので、あえて同時通訳可能な若い「B」クラスの方をお願いしたことがありました。結果的には、能力があってもプロ通訳者としての経験年数が少ないだけで「B」に閉じ込められている人だっているはずだ、と独りよがりの思い込みもよくなかったし、英語圏での生活が長く帰国後したばかりだから、日本人の若者の今どきトークも英語への置き換えセンスは海外経験ゼロの中年通訳者よりは遥かにイケてるだろう、という勝手な想像もよくなかったようで、自分までつられて惨敗したことがありました。

 英語のセンスやヤル気だけはあっても、通訳業務は、経験が物を言うようです。それでも、経験の質の問題であって年数だけだとは今でも思っていませんが、《感覚》だけが突出していると、やはり通訳者としてはバランスが悪いのものです。

 話は変わりますが、バイリンガルな社員でもこういう人を見かけたことがあります。海外経験も豊富で、英語など外国能力も高く外国人管理職のうけ(間違っても外国人スッタッフのうけにあらず)もよく、最終的には通訳業務まで引き受けてしまって、通訳業務を本職とする自分にまで悪影響を与えてきたりということもありました。意図や意思、気持ちは正しいのに、実施方法が無知による間違いだらけだったり。その人も、あそこまでがんばったら長続きしない、と思っていたら、1年半くらいで献身的な奉公はストレスで終わってしまったそうです。

 皮肉でもなんでもなく、社内通訳者の場合、特にいびつに属人的な状況だと、自分に不利な滅私奉公になってしまうこともありますから、いいかげんなフリーランスというのも通訳のあり方/働き方としてはアリだと思います。これ以降、批判的なことも書きますが、会社や理不尽な上司につぶされるくらいなら、テキトーな通訳でいるくらいがいいのです。


いいわけ・たらたら姫

 ここからはマジでムカっとくることもある人種の話になります。

 通訳者に限らず、仕事をするとテンション上がりまくりみたいな人がいますが、業務終了直後に開放感からか、社会通念上、そこまで言うか!といった内容の発言を発注者の前でズバズバおっしゃてくださる方が、決して少なくないのです。

 日本語を理解しないとはいえ、さっきまで通訳してたイギリス人のすぐ横で「私の慣れてるイギリス英語じゃないんで大変でした」と大声で言ってみたり、いまどきヨーロッパ人の話す英語を不出来の言い訳にしたり。そういった人たちには、あなた方の英語だって日本語訛りでしょ?とツッコミを入れたくなります。英語は国際語。通訳業務と同じで、話者を選ばないのが現実。(日本の文芸界でさえ外国人の書いた日本語作品が評価されている時代ですよ!)それがイヤなら標準的な英語の話者限定で発注を受けて欲しいもの。少なくとも、EU加盟国が政治やビジネスの世界で共通言語を英語にしたり英語対応を急速に進めて数年が経過している今日、ヨーロッパ人の英語がわからないくらいでパフォーマンスが大幅に落ちたり、現場での言い訳・話者批判を止められないなら、プロ通訳者の資格ナシ。

 ハッキリ言いますが、発注する企業の側では、結果が全てです。もちろん、あの役員は普段から意味不明な発言する、とか、英語はわかるほうだが、あの人の英語だけは聞き取れない、といった前提をふまえていますから、批判することを前提に通訳を聴く方たちは、そんなにはいません。そこまでヒマではありません。自分はむしろ批判が出てきた場合には、事前資料の有無など、ほとんどの場合プロ通訳者の弁護をします。しかし、言い訳・話者批判だけの通訳者は絶対に弁護しないことにしています。

 業界として、非ネイティブや非北米英語の話者が参加する場合の《追加料金》の設定が存在しない以上、自分が苦手な話者の訛りをオープンに批判したりすべきではありません。それが業界標準で、通訳を派遣するエージェント側のスタンスでもあるならばともかく。

 こういった方々の特徴として、服装がおかしかったりします。参加者のほとんどがスーツ着用のビジネスの現場に、ロングブーツにミニスカ&カラータイツ着用で登場。鼻ピアスしない感性があるなら、もうちょっとがんばって欲しいです。


(つづく)

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2009年09月16日 17:14に投稿されたエントリーのページです。

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