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 転職サイトで、社内通訳募集の案内や職務記述書を読むと、その会社の内情が透けて見えるようなケースがあって、おもしろいなぁ、と思います。

 何年も前から、少なくとも昨年までは常に通訳者を募集していた某ゴルフ場関係の会社のように極端な事例もありますが、いつでも通訳者を募集している会社ってのは、どんなにサラリーが良くても行く気にはならない上に、そういうところに限って、通訳未経験のような給料で通訳業務を数年経験しているような人を求めていたりするのも原因でしょう。

 数年前まではジャパンタイムズといった英字新聞による募集が多かったので、どの会社がいつも募集しているのかは分かりやすかったのですが、最近は人材紹介会社や派遣案件であれば通訳紹介会社や派遣会社を経由するようになったので、以前ほどは分かりやすくないのですが、複数の派遣案件をまとめて紹介するサイトへ行くと、同じ会社の案件と思われる募集が別々の会社から異なる時給や条件で出ている上に、会社によってはクライアント(企業)の名前は伏せてあって、最寄り駅しか書いてなかったりするのに、会社によっては住所が分かりやすい形で書かれていたりします。

 転職案件であれば Job Description が明確に記されていることもありますが、なかなか良い人材が見つかりそうもない会社のはとにかく、細かいことがいろいろ書かれています。とある外資系企業の募集案件など、支離滅裂な部類で、社長の通訳ができる人を求めているし、出張対応も可能な人、と極めて合理的ですし、どんなに優秀な人が在職していても妊娠・育児や親の介護など出張に出られない人がいたりするから、どこも同じような悩みはあるのかなぁ、と思う反面、よく読むと、社長の通訳だけじゃなくて、他の人(幹部、役員とは書いてない)の通訳もやって欲しい。なおかつ、プロジェクトの通訳・翻訳をした上にプロジェクトの推進補助みたいなこともって、おいおい、いったい何人分の仕事をさせる気なんだ?って言いたくなるような案件でした。

 読み方によっては、ああ、この会社は在職している【複数】の通訳者に対する不満を列記することによって【1人】の通訳者を新規雇用して問題解決をしたいか、もしくは、不良在職者への牽制役にしたいんだな、といった事情が見え隠れたりもします。(そんな所で、働きたくなんかありません。)

 通訳や翻訳はその道のプロがすべきものであって、一部「家会話ができる=通訳も可能」と勘違いしている企業を除けば、プロ(経験者)にやって欲しいからと求人をしたり、紹介会社にリクエストするのはいいのですが、ほとんどの場合、プロは求めるけど、通訳や翻訳といった業務のプロが、どういう人が欲しい、その人に何をやって欲しい、どうゆうふうに働いて欲しい、協力して欲しい、と希望が不当に歪んだ形でふくらんでしまうこともあるようです。

 企業によっては、待遇面と業界的なことで問題なければ、通訳スキルと経験さえ持って来ていただければ、こちらで業界のことなど教えます、というところもあるのですが、ちょっとでも名の知られた会社や規模が大きい会社だと、採用担当者がどれだけ当社で働きたいか表明してくれたまえ、私の権威や権限や功名心をくすぐってくれたまえ的な対応を前提にしないと難しかったりもします。個人的な体験だと、通訳者として向上していきたいと表明した段階で即座に落とされたこともあります。エレベーターまで送ってくれた担当者がこぼしてましたが、その企業(名だたる財閥系の化学会社)のトップは、採用時点でのスキル・レベルは重視するが、通訳者として向上していきたいとかそういう人は求めてないんだとか。向上=転職のための踏み台的な経験をしたい、ではなかったんですけどね。

 社内通訳者の待遇や扱いというのは難しい面があって、採用や雇用形態をどうしよう、というところから、ある程度の担当分野を決めてやる会社から、ほとんど置屋のようなプール制度までさまざまです。通訳ができるという前提で採用しているのだから、スクールへの通学は全くサポートしませんよ、という会社もあれば、業務に関係するものならいいですよ、という会社もあります。通訳者を(仮に社長専任であっても)派遣や契約でしか雇わない会社もあれば、情報漏洩などコンプライアンスの観点から正社員でしか雇いませんといいうポリシーの会社もあります。でも、往々にして「プール」制度の通訳グループを正常に機能させることは、非常に難しいことである、と結果が示しています。いや、仮にうまくいっている通訳グループがあったとしても、それはコーディネーターなりリーダーがうまくやっている属人的な成功であって、制度の成功ではありません。通訳プール制といういのは、社会主義/共産主義と同じで、理想としては完璧なのですが、実施の段階でダメになる、シェーンベルクの十二音技法ではありませんが、結局はわかりやすいメロディー(テーマ)や目標なり業務上の属性が明確でないと、通訳グループの中には、政治的な力関係やイジメや嫉妬などが渦巻くことになります。

 だからこそ、通訳者として活躍するなら、フリーになったり、派遣や契約など期間限定で働く方が向いてます、という通訳者が大多数で、社内にいたほうがいい、と考えて実行している私のような通訳者が珍しいのです。

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2009年01月28日 15:38に投稿されたエントリーのページです。

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