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「外資」という幻想、属性の問題

 夏野剛氏が日経のIT+PLUSに連載されている『夏野剛のネオ・ジャパネスク論』を読んでいますが、本日アップされた「『幹部は全員日本人』で真のグローバル化を目指せるか?」もおもしろかった。

 グローバル企業を目指すような(日本)企業であれば、英語のできない幹部は即刻辞任すべき、とも論じています。通訳を生業にしている者として、私ならばそこまで言うことはないと思いますが、「日本人の場合、語学力を言い訳にするビジネスマンがあまりにも多く」(http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMIT33000004112008&cp=2)というくだりは、本当にそうだ、と思います。

 もっと広い視野から見た場合、日本人のほとんどが、そういう言い訳ビジネスマン状態だとも思います。

 老いも若きも、日系企業であれば英語は重要ではなく、外資であれば英語が重要、と考えているようですが、実態は必ずしもそうではありません。職種や会社からの期待度にもよるのでしょうが、このグローバル化された時代、「フラット化する世界」(トーマス・フリードマン著)が日本語版でも出版されて多少の時間が過ぎた今日、外資=英語、日系企業≠英語、なんて考えは非常識未満の寝言です。為替レートの変動で輸出産業の業績が左右されるくらい日本という国は世界と取引しているのです。ということは、日本以外では、日系企業は立派な外資。業績を【円】で計算しているからといって、すべての売上が【円】ではないのです。

 日系上場企業の社長さんやトップレベルの役員の方々には、海外赴任経験者が多くいらっしゃいます。上司が外国人であった時の経験から言わせていただくと、通訳なんぞ最初から要らない、と同行しないこともあれば、英語も難なく理解するし、海外では通訳ナシで外国人と英語で役員会の議長まで勤められるのに、他の出席者のことも考えてか、通訳をきちんと聞いて(いるフリをして)から日本語で発言さるような方もいます。T芝のN社長だって、N産自動車の会長さんにしろ、日本語があまり得意ではない外国人を目の前にされた時は、普通に英語でお話しされます。

 なのに語学力を言い訳にしたい人がたくさんいる現在の日本では、「外資」というのは雰囲気からして違うような幻想がすごすぎます。日本法人が独特の発展を遂げる外資もあれば、ハラスメントやダイヴァーシティ(女性活用など)でかなり遅れてしまっている外資もあります。日本法人の社長が日本人の法人もあれば、社長だけは絶対に本社からの人間、という外資もあります。経営トップや役員だけではなく、一般従業員も、国際的な職場もあれば、上が外国人でも下は日本人ばかり、という職場もあります。

 一度、「外資で働くってどんな感じですか?」と訊かれて、「それぞれじゃないですか。同じ外資でも金融とITでは雰囲気も違うだろうし」と答えてしまったことがあります。一方で上記のような理由から、「日系企業ほど国際的な企業はないから、英語は必要だよ」と言ったこともあります。(日系企業を顧客として担当したって、その先まで英語フリーゾーンで仕事をできるなんて勝手な想像は止めたほうがいいよ、という意味でした。)

 日本人が言い訳ビジネスマン状態であることは、バイリンガルな人間がどう揶揄されているかを知れば分かることです。帰国子女に対する偏見だってそう。現地の日本語学校に通ってまいが通っていまいが、週末の補講などに通わせたりするような教育熱心な親の子供は世界のどこでそだっても正確な日本語が話せるものだし、帰国子女であろうが日本でのみ教育を受けていようがいまいが、子供の教育に感心の薄い親の子供は、どうしようもない日本語を使うものなのです。なのに、日本語にちょっと詰まると「あなた帰国子女?」みたいなことを言うプロ通訳者が幅をきかせているいるのがこの国の現状。考えてみると、通訳者だからって国際的な人間ばかりかというと、そんなこと全くないのも現実です。

 これは、属性の認識にかんする問題でもあります。語学力のある人達とはどういう属性なのか。外資という脳内妄想的な属性。日本語能力が、日本における教育を受けたかどうかという属性だと勘違いしている人達、などなど。

 ヨーロッパのビジネスマンと英語で話しているとわかることですが、フランス人であろうとオランダ人であろうと、グローバルにビジネスを展開する以上、ビジネスの共通語は英語であると、徹底的に割り切っています。自分の母語が特殊だから、といった言い訳なんか聞いたことさえありません。

 印象的だったのは、まだ24歳なのに国家公務員をへて民間企業へ転職したというフランス人男性と話したときのこと。優秀で飛び級を重ねた結果、そんな経歴をその若さで持っているような人でしたが、英語でビジネスを行うことは、ヨーロッパ諸国がEUとしてまとまってから更に加速した、という説明でした。

 日本人が、語学力を言い訳にし続けているということは、アジアからも孤立し、パラダイス鎖国への道を突き進んでいる証拠なのかもしれません。(どうりで最近、幕末の話が身近におもしろく感じるわけです。)

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2008年11月10日 22:00に投稿されたエントリーのページです。

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