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Change は要注意な単語

 アメリカ大統領選挙に向け、民主党候補のバラク・オバマ氏は「Change」というキーワードを掲げて活動をしてきました。日本のメディアでも「変革」という訳語が定着しましたが、ずいぶん苦労されたのでは?と思える表現です。勝手な思い込みかもしれませんが。英語で change といえば、ごくごく普通の表現ですが、「変革」という日本語はずいぶん仰々しく聞こえます。

 このエントリーを書くにあたり、change の語源を調べた所はフランス語経由で入って来たラテン語が元になっていますので、英語単語として「やまとことば」(アングロ・サクソン語)ではない、ということになり、日本語の訳語も漢字二字で外来語っぽい表現でもいいのかな、とも思います。しかし、英語では You need to change. と言うような場合、あなたは変革しなくてはならない、などと訳していたのでは通訳者/翻訳者としは失格です。(誰もしないと思いますが。)

 オバマ候補が主張している Change とは、ブッシュ政権、引いては共和党による政治のままでは良くないから“変革”しなくてはならない、という強い現状否定でもあります。

 日本語訳で一般的なのは「変わる」「変化」などですが、変化を望ましいとする視点の側にいる者にとっては望ましい表現であっても、変わらなくてならない、あるいは一方的に変えてしまわれるような側にいた場合、非常に非情に聞こえ、自己否定されたかのような印象を受けることがあるのだ、ということを通訳業務を通じて学ぶ機会がありました。現状否定なのですから、現状体制にいる人達が被害妄想に襲われたとしても当然です。

 そのような経験があるため、許される範囲内で自分は「改善」という訳語を使います。発言者がポジティブなトーンで使っている限りにおいては、日本語でもポジティブに受け取っていただかないと通訳者としての責任を果たしたことにならないと考えるからです。意訳、と批判されるかもしれませんが、通訳のオーディエンスは必ずしも知的でインターナショナル・ビジネスに精通したビジネス・ピープルとは限らないのです。アメリカやヨーロッパの本社どころか、シンガポールのアジア太平洋地域本部からもかけ離れた日本の地方で、その地域限定で営業されているご高齢の方々もいたりするのです。

「改善」が最適な訳語ではないかもしれませんが、「変える」という言葉に込められた(込められたと見なされる)否定のトーンは、場合によっては命取りになりかねなのです。発言者が意図しなくとも、受け取る側が不快に思ってしまわれては“負け”なのは、セクハラみたいなものかもしれません。

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2008年09月06日 14:01に投稿されたエントリーのページです。

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