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マラーニ著「通訳」

 ディエゴ・マラーニ著「通訳」(橋本勝雄・訳、L'interprete Diego Marani)という幻想系サスペンス小説を読みました。物語はとある通訳者が同時通訳業務中に異常をきたすようになったことから、上司にあたる主人公が異常の原因を探るというヨーロッパを舞台にした言語ミステリーでもあります。

 著者のマラーニ自身、通訳者でもあるとのことですが、この小説では一貫して通訳業なんぞ「不健全な行為であり、精神が不安定になるにきまっている」、通訳者は「風変わりで不健全な人種」などと形容しているのが自分には非情に健全に思えました。通訳というよりは、外国語を操ること事体が不健全である、というのがこの作品のトーンでもあり、内容に深く関わる前提でもあります。

 サスペンスでありミステリーでもあるのでこれ以上の説明は控えますが、たかだか民間のスクールで教えているだけで権威主義的な態度を取る日本の一部通訳者は、ヨーロッパの多言語共存環境から生まれたこの小説にどう反応するのだろうか。

 故・米原万里さんが、英語の同時通訳者ほどつまらない人達はいない、と辛辣に批判していた意味が少し理解できた気がします。視点(通訳対応可能な言語の数)が限られている絶望と、視点が常に複数ある絶望では、転じて福となりえるのは後者のみである、という多元主義(?)の奥深さも覗いたような気になりました。(自分もこれを機会に、興味のあるフランス語とアラビア語でも勉強するようにしないと…。)

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コメント (1)

ミッキー:

最近のシリコンバレーは英語は共通語であるが故に使われているだけで、それを喋っている人たちは半分以上が非英語圏出身者です。よって、英語圏の人でも、多元的な要素は培われつつあると期待してます。

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2008年08月15日 06:36に投稿されたエントリーのページです。

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