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通訳業は水商売

 通訳者に水は必要です。これに異論がある人はいないと思いますが、誰がその水を用意すべきなのか。この点については意見の相違があるようです。

 個人的には、クライアントが水を用意すべき、と高慢なことを通訳者が宣う現場に居合わせたことはないのですが、通訳者が水をめぐって不用意な発言や宣戦布告、はたまた国交断絶をしてしまったようなエピソードは聞きます。

 ホテルの宴会場や会議室、場合によっては客室で仕事をする場合、ホテルの方が水やコーヒーなどを持って来てくださるので問題はないし、各種リクエスト(女性通訳者の場合、ホテルの冷房に弱く毛布が必要な場合が多い等)に対応していただけますが、それ以外の普通の会社、ましては官公庁においてホテル並みの待遇を期待する方がおかしい、と思います。

 その究極のリクエストが水。なぜか水は自分で持って来るものではない、と考えている通訳者もいるようで、行った先で用意されていないと不機嫌になったり。

 今は存在しない某エージェントから派遣されて来た通訳者が昔の職場で「メモ用紙ください」と当たり前のように宣った現場には居合わせたことがあります。フリーランスの通訳者でも基準はそれぞれあるようですが、一般的にプロであれば自分の商売道具は基本、自分で揃えるものです。通訳者にとって水が必要であれば、通訳者が持参することはおかしなことではありません。実際、フリーランス(個人事業者)の通訳者の場合、税務署においても必要経費として水を含む飲料購入費は計上することが認められています。しかも常識の範囲内であれば領収書ナシで。

 通訳者が水を必要とすることは当然としても、通訳としてクライアント指定の場所へ行けば、料亭やお茶屋さん並に水やお茶が出て来ると想定する方がおかしいと私は思います。特殊な現場や出張先など、自己調達が難しい場合はクライアントへリクエストするとしても、首都圏に暮らす通訳者が都内での仕事に出向くのにイチイチ水ごときでガタガタ言うべきものとも思いません。

 プロ通訳者の報酬は世間一般から言えば高額です。企業などは決められた予算の中から支出しているのです。高額のギャラを貰っている人間が自分の職場にやって来るだけで不機嫌になる人も中にはいるのです。担当者はその通訳者を呼ぶためにどれだけ支出しているのかわかっています。通訳者だけではなく、同時通訳ブースやサウンドエンジニアの費用も同時にかかっていたりします。なのに、水ごときで不機嫌そうに不満を述べられたら不機嫌が増幅されるだけです。

 配慮に欠けたクライアントもいます。どうしようもいケースもあります。でもフリーで仕事をするのであれば、それも予見可能なことと見なし、自分が最善の状態で通訳業務をおこなえるよう最善の努力をするべきことこそ美しいのであって、水が提供されないことでクライアントやエージェントと衝突することは見苦しく幼稚なことでしかないと思います。

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コメント (4)

ミッキー:

通訳者で、ちやほやされるのに慣れすぎたり、プロ意識に欠ける人はいるでしょう。でも彼らを自然淘汰するだけの「品質管理」意識がエージェンシーやクライアントにも必要だと思いますよ。スクールで、「プロとしての心構え」も教えてくれるとよいですね。

Yoshi:

ミッキーさん、コメントありがとうございます。スクールで…、という指摘、ごもっともなのですが、水なんかでコーディネーターと衝突するような通訳者に限ってスクールで教えていたりするのです。コーディネーターと衝突するくらいですから、スクールとも衝突し、今では【元】講師とのこと。

t.h:

出席者全員に水が出ているのに通訳だけ水が出ないってことがたまにあるんですよね。だからと言って、ガタガタ言うつもりもないし、水もなるべく自分で持っていくようにはしているんですけど、「この中で誰が一番多く話すかご存じ?」と聞いてみたくなることもあります。

Yoshi:

t.hさん、コメントありがとうございます。

>「この中で誰が一番多く話すかご存じ?」と聞いてみたくなることもあります。
 まさしく、なんですが、担当者や現場の人達の常識や善意を期待してもダメなケースがほとんどですから、しないようにするほうが賢いと思います。

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2008年08月07日 06:00に投稿されたエントリーのページです。

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