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書籍「英語通訳への道」(改訂版)

 改訂されCD1枚付きとなった「英語通訳への道」(大修館書店 )を読みました。既に同時通訳者として経験を積んでいる者でも参考になりますが、英語の会議通訳者になりたいと思っている方には推薦します。今をときめくベテラン、トップクラスの通訳者も寄稿しています。

 同書を読んで思ったことを少し書きます。

 まず、同時通訳者の必須アイテムの中に自分専用のイヤホンのことが書かれていて、ステレオ/モノラル、ジャックの大小も用意しておくことと、と書かれていて、「やっぱりそうだよね」とつぶやいてしまいました。社内の同時通訳ブースだけではなく社外のブースでの仕事をお依頼した際、何度このジャック問題について繰り返したことか。

 要するに標準(大)と iPod などでおなじみのミニジャック(小)の両方があるのですが、この基本情報を知らない同時通訳者や彼らの手配をおこなうエージェントがあまりも多いのです。ひどい場合だとエージェントに説明して数日後、通訳者からの質問です、と同じ質問をされたことも一度や二度ではありません。

 同書に書かれている通り、どんな状況にも対応できるように自分で用意するのが「プロ」。どれかひとつだけ持って行きたい主義の方もいるようで、自分の怠惰を棚上げして弊社のシステムを見て「最近、アメリカ系企業だとミニの所も多いのですよ」と不毛で建設的でもない意見をのたもうた通訳者もおりました。(こちらは単に、備え付けのヘッドフォンが大きく重いので、特に女性通訳者への配慮として、親切心で情報提供しているだけなのですが。)ヘッドフォン/イヤフォンの変換プラグなんて各数百円。可能な組み合わせ全てに対応させたところで2〜3個もあれば充分。軽くて携帯に困るような大きさでもありません。ただ、一部の「ビジネス」通訳者や逐次通訳やウィスパー通訳がメインなので、あまり必要がないのでしょうが、社内にブースを構えている外資系企業も多々あるのですから、同時通訳案件を引き受けるのであれば、最低限、用意はしていただきたいと常々おもっています。

 ひとつ反省したこともあります。それは、他の通訳者のことも考えて、一人で同時通訳を行わない、というもの。要するにブースに入ったり機械を使うような同時通訳業務を単独で行うな、というものです。確かにそうなのですが、短時間だったり、休憩時間の配慮がある社内会議の場合、これをしてしまったことがあります。社内通訳者として、30分だけでもしないとは言えるものでもないのです。ただ、外部の通訳者を雇う場合、準備期間や資料などの提供が必要なため、一人で同時通訳を行うストレスと外注をかけるストレスとを比較した場合、前者の方がラクと感じたことも多々ありました。発注する側で働いたことのないフリー通訳者には分からないでしょうが、発注するだけの労力や所要時間というのも、バカにならないことが多いのです。

 一時期、社内の事情をよくご存知のフリー通訳者の方を重宝してお願いしていたこともあるのですが、慣れすぎてしまい、資料は読まないで仕事に来る、大事な社外向けの会議に遅刻して到着したりと目に余る行為が散見されたので発注を止めました。

 残念だと思ったことがあります。ひとことだけ「裏紙」の使用に関して、取り扱いに注意すること、と書いてありましたが、個人情報保護法などがなくても裏紙は使うべきではない、というのが持論です。裏紙を使っていいのは社内で通訳をする時の社内通訳者だけだと考えます。(来客時には使うべきではありません。)

「裏紙」というのは、フリーの通訳者にとっては自分の所属しない組織(よそ様)のモノ。事前に提供されようが当日、現場で提供されようが、業務終了時に返却するのが正しく、持ち帰ったり他社の案件でメモ用紙に使うなんてのは御法度だと思うのですが、いいかげんな通訳者もいるもので、チクられたり、廃棄方法が不適切でクライアント側へ「落とし物」として報告されトラブルになった人もいるそうです。(情報管理をしっかりしないクライアント側にも問題があるとも言えます。)

 ご丁寧に「裏紙」をクリップボードにはさんで持ってくる通訳者もいますが、場所を取り過ぎでは?と思うこともあります。同時通訳ブースにせよ、通訳席にしろ、資料を広げるスペースが狭いことも多々ありますので、自分は速記用メモ・パッドを使っています。

 持参したメモ用紙に書いた情報はどうするの、という問題もありますので、一部の方がやられているように、資料にどんどんメモしてクライアントに返却するのがベストかな、と思うところもあります。外交交渉などに関わらない限り、通訳メモが盗まれたからといって情報が直接的に漏洩することはまずないと思いますが(日付や会社名や議題などを明記しない限りは意味不明の汚い文字ばかり)、もし、発注者側で気になるのであれば、メモ帳やメモ用紙を通訳者へ提供して業務終了時に返却させるとよいでしょう。

 こういったことはマナーの問題というより、究極的には通訳者の護身術として考えるべきなのかもしれません。情報管理の極端に厳しい環境で働いたことはありませんが、通訳者には口外しないという守秘義務が前提としてあります。情報の取り扱いも誤解のないようなクリーンさを心がけるべきだと考えます。

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コメント (1)

ミッキー:

久々の更新ですね。首を長くして待っていました。ヘッドフォンのジャックにしてもメモ用紙にしても自分にとっての「当たり前」が相手にとっては「当たり前」でないこともあるので、できる限り事前に情報提供するようにしたらよいのではないでしょうか?
例えば、発注者は「ヘッドフォンはこちらで用意してあります」と言い、通訳者が自分のを持参したいと言ったら、そこでプラグの形について確認したらよいでしょう。一から十まで全てクライアントが用意してくれるものとアテにする通訳者もいるようですから、用意されているものと持参してほしいものは明確にしたらよいでしょう。
出された水がペリエだかエビアンだかのブランド品でなかったと文句をつけた通訳がいるそうですが、指定がある場合には持参するのが常識だと私は思います。通訳だってサービス業なので「女王様」のような態度を取るのではなく、使ってもらっているという謙虚な姿勢が必要でしょう。
私はおかげさまで、とんでもない条件をふっかけてくるエージェントとは縁がなくて済んでいますが、あまりひどい条件の時は辞退する(もしくはボイコットする)ことで、業界全体が是正の方向に向かっていくのではと期待します。

通訳も翻訳もうまく行って当たり前の世界なので、品質に問題があった、態度に問題があった時のことだけが印象に残り、ついその部分を強調して書きたくなりますが、うまく行ったことも書くと内容にバランスが生まれてくると思います。

私、個人的には、通訳者も翻訳者も時々発注者の立場になって自分のパフォーマンスを振り返る必要があると思っているので、このサイトの情報は自分を戒めるためにも参考にさせて頂いています。とは行ってもつい「自分のことは棚に上げて」となってしまいますが。

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2008年04月04日 14:34に投稿されたエントリーのページです。

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